interview
聞きたい
【聞きたい飯塚花笑監督1▶︎】
群馬で撮影『世界は僕らに気づかない』
2022.05.20
映画監督、飯塚花笑さんが存在感を発揮してきた。今年1月に初の劇場公開映画となる『フタリノセカイ』を公開すると、群馬県内で全編撮影しキャストも演技経験のない県民を起用した新作が高い評価を獲得している。
大阪アジアン映画祭で入賞
―フィリピン人の母親を持つ太田市の高校生の不安定な感情と成長を描いた新作の『世界は僕らに気づかない』が大阪アジアン映画祭で入賞しました。
「活動を支えていただいた県、出演者、スタッフ全員の努力の結果です。作品は青春映画の皮を被った社会派ドラマです。母と子のすれ違い。それと、フィリピンと日本の文化の違いを絡めたかった。企画自体は6年前から。大学を卒業したが上京する資金がなかったので、1年間、シネマテークたかさきでアルバイトをした。実家で過ごす時間が長くなり、このときに経験した母親とのすれ違いを題材にして脚本を書いた」
―全編を群馬で撮影しました。
「キャストも含めて協力してもらったので、作品を世の中にしっかり出さなければという責任感がある。さっそく、いい感想を得て、高い評価をいただき、『いい子に産んであげられたな』と感じ始めている」
演技経験のない県民をキャストに
―キャストは主演のほかはほとんどが演技経験のない本県在住者でした。なぜでしょう。
「前作『フタリノセカイ』を撮っている最中、いろいろな経験をした。事務所に所属して、プロとして活躍している俳優さんはスケジュール的にも演技的にも制約があった。そこで、この映画と向き合う時間をじっくり作り、本気で作品と向き合える人に出てほしいと考えて新しい手法を採った。集まった80人から3カ月かけてワークショップオーディションでキャスティングし、選ばれた20人に2カ月かけて稽古して芝居の基礎から学び、役作りをしてもらった」
―結果として、どうでしたか。
「完成形を観て、この方法は間違っていなかったなと確信した。俳優さんは(演技で)他人になることをするが、今回は違うアプローチにした。自分の人格のまま自分と役が重なる部分を見つけて、演技してもらった。5カ月の間、役と向き合ってもらった。自分のまま映画の中に入っていける。だから、演技に嘘がなかった」
いいづか・かしょう
1990年1月、前橋市生まれ。木瀬中-高崎経済大附属高-東北芸術工科大デザイン工学部映像学科卒。『僕らの未来』は、ぴあフィルムフェスティバルで審査員特別賞を受賞、海外からも高い評価を得た。今年1月、初の劇場公開映画となる『フタリノセカイ』を公開した。東京と群馬の2拠点で映画製作にあたっている。