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事故死の妻偲び寄付続け
都木さんが故郷の前橋市へ

2025.08.08

事故死の妻偲び寄付続け
都木さんが故郷の前橋市へ

 10年前に故郷の前橋市で妻を交通事故で亡くした神奈川県相模原市の会社役員、都木守男さん(87)が8月8日、前橋市役所を訪れ、「交通事故を1件でも減らしてください」と15万円寄付した。事故の翌年の2016年から寄付を続け、今回で10回目。累計230万円になる。市役所で感謝状の贈呈式があり、猪俣理恵副市長と懇談した。

青信号の歩道ではねられる

 「かわいそうだったな」。最悪の事故を振り返り、都木さんは亡き妻を哀れんだ。

 都木さんの妻、純子さん=当時(69)=は自宅近くの交差点で横断歩道を渡っていた際、猛スピードで右折してきた車にはねられ命を奪われた。

 「青信号で横断歩道を渡り切るまで、あと2㍍。妻をはねた車は直線してくる対向車線の車より速く通り抜けようとした」と状況を説明。「運転手は『見えなかった』と言い訳していたが、見なかったんだ」と憤る。

▲「運転に限らず、自己中な人間が多い」と嘆く都木さん

 純子さんは高齢の都木さんの父母の面倒をみるため、都木さんの実家で生活していた。神奈川県内に住んでいた都木さんは毎週金曜に帰省、この日はその日だった。

 防犯ビデオの記録から純子さんは買い物帰りと分かった。「おれのために何か料理を作ろうとしたのだろう。病院から携帯に電話がかかり、『これ以上、手術しても傷つくだけです』と言われた」。最愛の妻の最期を覚悟させられた連絡は忘れようにも忘れられない。

▲「雷が少なくなった」など故郷の変化を話す

 都木さんは妻の供養と自分と同じように悲しい思いをする人がいなくなるよう、交通事故防止のために寄付を始めた。「いつまで続けられるか。長く続けようと思うけど」と静かに語った。

 この日は長女一家が住む実家に泊まり、あす9日、近所の菩提寺に墓参りする。