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「BAJA1000」3年目の勝負-1-
【直前対談▶赤星大二郎×横田衛】

2024.11.10

「BAJA1000」3年目の勝負-1-
【直前対談▶赤星大二郎×横田衛】

 TEAM JAOSが「BAJA(バハ)1000」に3年連続で参戦する。11月15、16日にメキシコのカリフォルニア半島で開かれる北米大陸最大にして最難関のラリー。過去2年は厚い壁に阻まれた。勝負の3年目。赤星大二郎監督(ジャオス社長)と横田衛アドバイザー(群馬トヨタグループ社長)が夢を語り合った。

完走、そしてその先へ

赤星 「バハ1000」、3度目の挑戦、よろしくお願いします。1年目の2022年は100㍄走って無念のリタイア。前回はゴールまでたどり着いたけど、制限時間(48時間)を40分超えてしまい公式記録に残らなかった。3年目はまず、時間内に完走したい。そして、あわよくば参戦するクラスで優勝したいですね。

横田 そうだね。まず、完走。リザルトを残したいね。赤星監督に引っ張られて、メンテナンスは一貫して群馬トヨタグループが全面的にバックアップさせてもらっている。ドライバーに「完成品」を走らせてフィニッシュラインを切ってもらうのが、われわれの成功のゴール。エンジニアが賞賛されることになる。努力した成果が報われる体験をさせてあげたいんだ。

▲「3年目の完走」を誓う赤星監督

赤星 今回で57回目と歴史ある大会で日本から参戦しているのは4輪ではわれわれだけ。昔はメーカーのワークスチームが出場していたけど、いまは出ていない。日本のプライベートチームがレクサスで参戦するのはすごいことでしょう。昨年は「ウエルカム・バック・レクサス」って歓迎してもらいましたね。

横田 奇跡的なことだったね。出たくて出られるレースではない。赤星監督のコミュニケーション能力、能戸(知徳)君という優秀なドライバーの存在とうちのエンジニアの技術、トヨタ自動車との繋がりとか、いろいろなパズルが合致してスタートに立つことができたと思っている。

赤星 そもそも、バハに出ることになったのも能戸からの提案でした。アジアを舞台に戦い、チャンピオンになったけど、コロナ禍でアジアの大会がなくなったのを機に、彼の長年の夢であったバハに挑戦しようと。ただ、メカニックも、資金も問題がある。悩んでいたら、横田社長が応援してくれました。

横田 私は背中を押す係。「出てから後悔したら」と勧めたんだけど、実は別のミッションもあった。立ち上げから関わってきたレクサスが「LX600」をフルモデルチェンジすることになり、メーカーは「イメージリーダー」を探していた。国内需要やマーケティングの手ごたえをつかむためにね。

▲バハとの奇跡的な運命を喜ぶ横田アドバイザー

赤星 新型LX600はレクサスのフラッグシップSUV。本来持っているDNAである荒々しさ、悪路走破性、堅牢性を打ち出した。これをジャオスがカスタマイズしてバハに出れば、レクサスと協働できるかと考えました。群馬トヨタグループは国内のディーラーとしては異例の取り組みですね。その前提に横田社長の好奇心が根本にあるのでしょうが。

横田 ロゴにしているGTGは群馬トヨタグループの略称であるとともに、「Glow To Gunma(群馬に輝きを)」の理念を込めているんです。世界の大会に群馬の会社がチームを組んで出場する。まさに、GTGの理念を体現していると思っていますよ。

悔しさの1年、手ごたえの2年

赤星 1年目は参加することに意義があった。もちろん、完走するつもりだったけど、想像以上にバハは過酷だった。100㍄だから10分の1で終了。マシントラブルが原因でエンジニアも悔しさが残る結果となった。準備不足や現地のサポートチームとのコミュニケーションのハードルも高かったが、いま思えばスタート地点に立っただけで満足してしまっていました。

横田 初めてだったから不安だらけだったけど、案外うまくいくんじゃないかなという気持ちも正直あった。でも、ラッキーで完走できる世界じゃないと思い知らされました。ただ一方で、「次」に手ごたえも感じた。バックアップする側として、何が欠けていたか、見えたこともあった。

▲群馬トヨタグループのメカニックと記念写真

赤星 2年目は1300㍄という過去最長のレースでしたが、いろいろと準備ができた。足回りの強化や軽量化を図り、現地チームとのコミュニケーションも密にした。ボロボロになってゴールテープを切った時は感動しましたね。時間オーバーで「完走」はできなかったけど、「走破」はできた。

横田 主催者は撤収したがっていたけど、待たせました(笑)。もう少しでゴールすることが無線で分かっていたので。主催者も「せっかく日本から来たのだからゴールさせてやるか」って理解してくれたみたい。無事にゴールでき、「よく頑張ったな」と車にもスタッフにも感謝しました。

▲ゴールまで走破して能戸ドライバー(右)とガッツポーズ

赤星 バハに出たことでいろいろと効果がありましたね。

横田 うちは「こういう取り組みをしている会社で働きたい」と県外からも入社を希望する若者が現れた。1番の効果かな。それと、エンジニアに光を当てることができたのがうれしい。営業マンは「何台売った」と評価しやすいけど、エンジニアは難しい。だけど、優秀なエンジニアをバハに派遣することになり、選ばれた人は誇らしいし、若手の目標にもなる。

赤星 わが社も社員のモチベーションを高めています。能戸と帯同するエンジニアだけでなく、設計のメンバーも含めて、みんなの思いを詰め込んで走るのは分かりやすい目標になっています。それと、北米を中心にヨーロッパや中近東で「JAOS」のブランドが認知されたことも大きい。「バハを走ったレクサスのホイールがほしい」と実際に引き合いもいただいています。

横田 それはいいね。じゃあ、ますます頑張らないと。今年は結果を残そう。

赤星 絶対に完走。完走することで、次の扉が開かれます。

横田 「次の扉」。楽しみだね。

▲現地で配るグッズ。デザインは横田社長