interview
聞きたい
【私の一冊】『カシオペアの丘で』
前橋市長 小川晶さん
2024.10.15
夢中になって読みふけった本、人生を変えた本、窮地を救ってくれた本、一生大切にしたい本etc. 前橋市長、小川晶さんのとっておきの1冊を聞きました。意外なことに本が縁となり、前橋に暮らすことになったそうです。
先輩のすすめで本に目覚めて
―本はよく読みますか。
はい、好きです。もっぱら小説を読んでいます。「さだまさしさんの『解夏』(秋桜)がとにかく泣けるからみんな読んで」と公言していますが、他にも宮部みゆきさん、恩田陸さんら好きな作家はたくさんいます。
いまは本を読む時間がなかなか取れないのですが、ちょっと時間が空いたら短編を読みます。漫画も読みますが(笑)。
―小さいころから文学少女だった?
いえ、中学生まであまり本を読むことはなかったですね。読書感想文は全然だめ。苦手でした。国語の成績もよくなかった。というか、悪すぎでした。
―本が好きになったのには何かきっかけがあったのでしょうか。
弁護士になりたくて、私立の進学校に入学したのですが、相変わらず国語が苦手でした。悩んでいたら、1つ上の先輩が「国語の成績を上げたいのなら、読書がいいよ」とアドバイスしてくれました。
先輩が薦めてくれたのが宮部みゆきさんの『魔術はささやく』でした。夢中になって読んで、本って面白いなと目覚めたんです。
それから、東野圭吾さんをはじめ推理系をよく読むようになりました。
―先輩は恩人ですね。
その先輩が前橋出身で、実は彼女がいたから司法修習の場を前橋にしたのです。前橋に来るきっかけを与えてくれた彼女は、今でも一番の親友です。
―縁がありますね。小川市長の「私の1冊」を教えてください。
重松清さんの『カシオペアの丘で』です。弁護士になりたてのころに初めて読み、何回も読み返しています。重松さんは1番好きな作家。『流星ワゴン』など、ほぼ全部読んでいます。重松さんの小説は、救われないこどもの話や、社会の闇みたいなテーマも多くて、重たい小説が多いのですが、世の中は光だけじゃない、苦しんでいる人がいるんだということを教えられます。
―どんなところが心をつかんだのでしょう。
『カシオペアの丘で』は、許すこと、許されること、死と向かい合うこと、人生や人間について考えさせられる1冊です。後半は間違いなく泣けます。
舞台になっている北海道の風景の描写が素敵で、私は高崎白衣大観音を見ると、いつもこの小説を思い出します。観音様が物語の重要なモチーフになっています。
何度も読むたびに新しい発見があります。創造性が求められる時代だからこそ、本を読んでほしいですね。
『カシオペアの丘で』
著者・重松清
発行・講談社