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「太陽の会」が一般社団法人化
前橋を日本の元気印の起点に

2024.08.02

「太陽の会」が一般社団法人化
 前橋を日本の元気印の起点に

 前橋ビジョン「めぶく。」の実現を目指し、民間主導のまちづくりを進めている企業家集団「太陽の会」(会長・田中仁ジンズホールディングスCEO)は8月2日、任意団体から一般社団法人に移行した。併せて、組織を再編成し会員を新たに募集、従来の23社から56社(人)へと大幅に増加した。馬場川通り遊歩道整備などこれまで取り組んできたにぎわい創出のハード事業に加え、起業家育成や文化事業といったソフト事業にも積極的に取り組んでいく。

会員23社から56社に増加

  一般社団法人化を正式に決めた総会で、引き続き会長に就任した田中さんは「10年前に太陽の会をつくったとき、『前橋は周回遅れだけど、新しい時代の先頭を走ることができる』と感じた。思いだけでやってきたが、みなさんの協力で台頭の芽が出てきた」とこれまでの活動を総括した。

▲「前橋は全国から注目されている」と報告する田中さん

 一般社団法人になることで、「もっと大きなうねりが起こる。前橋が元気になり、日本全体の元気印の起点になる」と訴えた。人口減少社会の中で税収を増やすためには「住む人、働く人、訪問する人を増やさなければならない」と指摘、クリエイティブ、デジタル、教育の三本柱を強化しながら「前橋を東京の劣化版ではない日本一の地域にしたい」と強調した。

 会員はこれまで周知が限定的だったこともあり一部の有志が名を連ねてきた。一般社団化にあたり、透明性を確保するとともに活動を強化するため新たに募集した。新たに医師、飲食店オーナー、弁護士といった幅広い職種の若い会員が加わった。さらに、会社の規模や社歴にかかわらず、前橋の活性化に熱意を持っている法人、個人に参加を呼び掛け、「オール前橋」体制を構築する。

▲設立総会に出席した会員

 設立時理事は田中さんに加え40代、50代、60代から2人ずつ選出した。理事、監事は次の通り。(敬称略)

◇理事 石井繁紀、石川靖、樋口明、町田憲昭、小林祐介、須田耕司

◇監事 宮下学、丸山彬

▲来賓の山本知事、小川市長、藤田審議官(左から)

朝比奈さんが基調講演

 設立総会には山本一太群馬県知事、小川晶前橋市長と国土交通省国土政策局官房審議官の藤田昌邦さんが来賓として出席。「県都・前橋の強みは人材。世の中の流れをつくるのは人の思い」(山本知事)、「民間の力が強いのが前橋の特長。しっかりタッグを組んで市民が『めぶく。』を実感できるようにしたい」(小川市長)とエールを贈った。

  沼田市など全国の自治体の活性化を支援している青山社中筆頭理事CEOの朝比奈一郎さんが太陽の会の組織運営のコンサルティングにかかわることになり、「まちづくりは人づくり~『始動力』が地域の礎~」と題して基調講演した。

 朝比奈さんは「リーダーは指導者ではなく、『始動者』。産業人こそ地域活性化の主役になる。自ら動き出すリーダーとなり、人を巻き込んで前橋を変え、日本中に広げてほしい」と会員を激励した。

▲「リーダーは指導者ではなく『始動者』」と訴える朝比奈さん

太陽の鐘、馬場川通り整備

 太陽の会は2017年、田中会長の呼びかけに賛同した前橋市内の企業家で結成した。会員は一口100万円または純利益の1%を拠出、広瀬川遊歩道への「太陽の鐘」の誘致や馬場川通り遊歩道の整備を支援してきた。こうした地域貢献が評価され、2度にわたって紺綬褒章を受章している。

▲広瀬川沿いの遊歩道に整備された「太陽の鐘」

▲レンガ敷きになり、親水デッキもできた馬場川通り

太陽の会へのお誘い

拝啓

貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 約10年前の2013年、前橋市の路線価最高価格は、47都道府県の県庁所在地中最下位の47位でした。新幹線が開通して活気を帯びていた高崎市を羨ましい思いで見つつ、前橋はもうだめだ、何もない、地域からはそんな声しか聞こえてきませんでした。

日曜日の午後、中央通りアーケード商店街は、閉店した店舗のシャッターばかりが目立ち、休日だというのに人通りがまったくなく、車が猛スピードで走っても人にあたらない確信が持てるほど見事に閑散としていました。もうこの街は終わったなと感じたのを今でも鮮明に覚えています。

しかし、そんな中でも活動する若者たちがいました。アーツ前橋の開業記念で出会った当時の若者との交流を通じて、まちづくりに少しでも協力したいと思い始めた頃に、廃業した白井屋ホテルが売りに出されることを危惧した地元の人たちから何とかしてもらえないかと相談され、購入したことがまちづくりに関わるきっかけとなりました。

前橋は、チカラのある経営者が数多く存在しますが、活動は点であっても、どんな街を目指すのかと言うビジョンがあると、道は違えど活動が点から線となり、やがては面になり、魅力が至るところで感じられる地域になると思います。

そのため、前橋市におけるまちづくりのビジョンの必要性を説き、前橋市とともに前橋ビジョン委員会を立ち上げ、前橋ビジョンを構築しました。この委員会は、あらゆる業界から35名の方々に参加いただき、ドイツのミュンヘンのKMS社が個別に面談し、それぞれの思いや考えを聞き取り、市民アンケート3,000人分の資料を持ち帰り、分析をしました。 200ページ以上にも及ぶ資料には、「Where good thins grow(良いものが育つまち)」という分析がなされました。そして、この分析を、前橋出身の糸井重里さんによって解釈され「めぶく。」と名付けられました。このビジョンにより前橋活性化がスタートしたと言えます。

「めぶく。」というビジョンが生まれたことで、まちづくりも白井屋ホテルも方向性が明確になりました。人が芽吹く街になるためにどうあるべきか、人が芽吹くためにホテルはどうあるべきか。また、前橋という大地に眠っている“人”という種が芽吹くためには雨、風、太陽も必要です。自然のそれらは無償のエネルギーを投じて種を芽吹かせます。ならば地元に根を張る経済人は、その経済力を駆使して無償のエネルギーを大地や人に与える役目を引き受けようではないか、ということで太陽の会が生まれました。

太陽の会では、これまで各社が、一口100万円あるいは純利益の1%を拠出し、前橋の価値向上のために投資をしてきています。

第一のプロジェクトとして、岡本太郎作太陽の鐘を誘致しました。岡本太郎の精神は「自分らしく、生きること」であり、そう考えた時に、地域では周りに気を使いすぎて思ったような挑戦が出来ていない人が多いことも知りました。もっと自分らしく生きよう、という精神や挑戦する気概、まさに太陽の鐘はその象徴であり、経済人の心意気を表したものになります。 

第二のプロジェクトでは、馬場川通り遊歩道の整備に寄付をしました。 街のクオリティに道路が大きく関係していることは、ヨーロッパなどの旧市街を見れば明らかなように、石畳など自然素材がクオリティ維持に大きく役立っています。前橋では、そういった普遍的な自然素材でありコンテキストにあう赤煉瓦を使い、前橋の旧市街でもある中心商店街に張り巡らされることは、商店街の風景を魅力的にし、大きな価値創造につながると確信しています。 広瀬川河畔と馬場川通りが、前橋の象徴として赤煉瓦の道に生まれ変わり雰囲気が良くなったと多くの市民から好評を得ています。

これらの事業により、太陽の会は紺綬褒章を受章しましたが、二つの事業はハードの整備に過ぎません。今後は、ハードだけでなくソフトにも拡げていきたいと考えています。 ソフトとは具体的には、挑戦する若者への支援、イベントへの支援、NPOへの支援、社会・環境問題への支援など、その時々において、前橋市の発展、価値向上のために必要と思われる事業に対し、見返りを求めない投資を行いたいと考えます。

太陽の会は、発足当時から注目を集めましたが、当時は、前橋市内の多くの経営者に声をかけられなかったために一部の集まりという声もありました。そんな中でも、大きな金額を拠出し、まちづくりに貢献してくれた初期の会員の方々には本当に感謝しています。現在のまちづくりの流れをつくりだしてくれたことが本当にありがたく思います。

そして今回、任意団体から一般社団法人への移行することにします。

理由としては一般社団法人という法人格を持つことで、より透明性を担保し、多様性をもち、より大きなオープンプラットフォームになることを目指していきたいからです。

そんな新生・太陽の会に入会し、前橋の活性化に対し共にエネルギーを投じてくれる仲間を募りたいと思います。 地域が元気になるには、その地域の経済に関わる方々のエネルギーが必要です。業種や社歴、規模に関係なく、フラットで有機的な繋がりにより、意義ある活動を生み出したいと考えています。

より建設的な議論を生み出すために、今回、シンクタンクの青山社中(代表:朝比奈一郎氏)さんをファシリテーターとして迎え、ご協力いただく予定です。また、日本を代表する経営者や有識者を招いた勉強会も開催する予定です。 (※朝比奈一郎さんは、経産省出身で現在はシンクタンク青山社中株式会社筆頭代表CEO) 

募集内容は、下記の通りです。

・参加資格  : 前橋市内に本拠地・支店・営業所のある法人、個人  

・年間拠出金 : 50万円

・年会費   : 未定(決定次第、ご連絡いたします)

  毎年払うには決して小さくない金額です。見返りは地元前橋が少しでも元気になれば良いという利他の心のみになります。それでも良いという志ある方とともにチーム前橋を広げ、新生・太陽の会の仲間になっていただける方を募集いたします。

多くの皆様のご協力により、めぶき始めた郷土前橋の変化を加速させていきたいと思いますので、何卒ご理解を賜りますようお願いいたします。

皆様の益々のご健勝をお祈り申し上げます。 敬具

2024年6月12日 

太陽の会(現在の任意団体) 会長 田中仁