interview
聞きたい
前橋のまちなかが舞台
飯塚花笑監督『ブルーボーイ事件』今秋上映
2025.03.28

昨年5月中旬から、前橋のまちなかを中心に撮影を行っていた飯塚花笑監督の最新作『ブルーボーイ事件』が今秋全国上映となる。60年代、日本のLGBT史を変えた実話を描いた社会派作品。撮影に挑む直前、飯塚監督に行ったインタビューを再掲する。その際明かされていなかった主演のブルーボーイ、サチ役は、オーディションで選ばれた中川未悠さん。事件に重要に絡む弁護士の狩野役は錦戸亮さんが演じる。
(取材/阿部奈穂子)
60年代、差別のなかでたくましく生きた姿
――ブルーボーイ事件とは、どんな事件ですか。
1964年の東京オリンピックの前後、街では浄化運動がさかんになり、警察は売春の取り締まりを強化しました。しかし、男娼は、戸籍の関係で売春防止法は適用されなかった。そこで、検察は見せしめとして、男娼の性転換手術を行っていた産婦人科医を逮捕。この逮捕は合法か違法か、裁判が行われ、1969年に有罪判決を受けた事件です。
――ブルーボーイとは、女性になった男性のことなのですね。なぜこの事件を映画にしようと?
7、8年前、映画を撮れずにくすぶっていた時期がありました。「こんな作品を撮りたい」とプロデューサーに持ちかけても、いまの日本の映画界はよほどショッキングな題材や、著名な俳優を使わないと成り立たないと却下され続けた。そんなとき、ブルーボーイ事件を知りました。
裁判記録も読み、当時を生きていたブルーボーイたちの声に衝撃を受けた。すさまじい差別のなかで、日常に溶け込みたくましく生きている姿にも感動しました。これは絶対に映画にするぞと決め、資料を探し集めて、脚本を書き始めたのが6年前です。

まちなかの廃虚ビルを舞台に
――ロケ地の中心は前橋だとか。
前橋にある会館やまちなかに建つ廃虚ビルの元キャバレーを使わせていただきます。ほかにも前橋の古い建物や通りなどをロケハン中です。
――スタッフやキャストも前橋に宿泊するのですか。
はい。およそ1カ月間にわたり前橋市内のホテルに泊まります。飲み食いもするので、前橋には相当、お金を落とすと思います(笑)。
――地元への経済効果はありがたい。しかし、それだけ製作費もかかるということですね。
都内で撮った方が早いし、安く仕上がるのは確かです。でも、私は「群馬から世界へ」を掲げて、映画づくりをやっています。
群馬の人たちに映画に携わるチャンスを届けたい。群馬在住者限定でキャストのオーディションをしたり、スタッフも2割ぐらいは地元の人を使っています。一本の映画を群馬で撮ることで、彼らの将来が何か変わると信じています。

――公開後は聖地巡礼で前橋に訪れる人も増えますね。
世界から訪れてもらえるよう頑張ります。(自分の作品を)三段跳びでいえば、『フタリノセカイ』はホップ、『世界は僕らに気づかない』はステップ、『ブルーボーイ事件』で大ジャンプしたいです。
