interview

聞きたい

【聞きたい石橋和樹さん】
前橋とフランス 一皿に融合

2023.11.13

【聞きたい石橋和樹さん】
前橋とフランス 一皿に融合

前橋市中心街に新たに誕生したフランス料理店のスペシャリテは「焼きまんじゅう」。自ら作る生地にフォアグラを合わせた群馬とフランスの融合。三つ星レストランで腕を発揮してきたセパージュ、石橋和樹シェフ。若き才能が前橋にやってきた。

食材からインスピレーション

――まえばしガレリアに6月、フランス料理店「セパージュ」が開店しました。話題を集めています。

ありがとうございます。

前橋はわれわれにとって縁もゆかりもない土地でしたし、料理とワインのペアリング合わせて1人7万円という価格設定で始めましたので、最初は「ひと月にひと組来てくれればいいんじゃない?」と会社は長い目で見てくれていました。

それでも日々改善しながら誠心誠意、お客さまと向き合っていると、噂を聞きつけた地元の人やグルメに関心の高い都内の人も来てくれるようになりました。いまは少しずつ手ごたえをつかんでいます。

――石橋シェフは都内の三つ星レストランで腕を振るっていました。前橋に来ることになった経緯を教えてください。

コロナで店を閉めていた時、オーナーから「前橋に店を出すけど、シェフやる気ある?」って声を掛けてもらいました。最初は「前橋ってどこだっけ」と正直迷いました(笑)。

でも、ジンズの田中仁社長をはじめ、前橋を盛り上げようとしている人たちがいるという話を聞き、とてもワクワクして「やります」と答えました。街を食とアートで活性化しようとする。道半ばだけど、その熱意、すごいものを感じました。

――実際に来てみてどうでした?

食材のクオリティーの高さに驚いています。特にすごいなと思ったのは乳製品。チーズも牛乳も素晴らしい。牛肉や豚肉、生ハムをはじめとする畜産加工品もいいです。

食材からインスピレーションを受けることが多いので食材に恵まれているなと感じています。

そもそも、普通にスーパーで売られている野菜の鮮度が良く、生産者の名前まで分かる。前橋のみなさんは日ごろから当たり前のようにいいものを口にしているんだなと感心しました。

▲すっかり中心街のランドマークとなった「まえばしガレリア」

▲前橋の食材にほれこむ石橋シェフ

――群馬県産の食材が活躍していますね。

白井屋ホテルの「ザ・レストラン」の片山ひろシェフが地元の食材にとことんこだわり、海の幸や海外の食材をまったく使わずにフランス料理として成立させていることに驚きましたし、他のレストランにはない世界観に感動しました。

と同時に、東京から来た自分が同じことをやっても勝てないなと感じました。

ただ、東京で長く働いてきたからこそ、自分は日本中の美味しい食材や生産者から届く新鮮な食材を使い、群馬の食材や食文化と組み合わせたフランス料理を作ろうと考えました。

例えば、鴨肉のソースには上野村の十石味噌を隠し味にしています。随所に和を取り入れていますが、着地点はあくまでフランス料理に置いています。

――食文化に関してはどう受け止めましたか。

焼きまんじゅうをスペシャリテにしています。群馬のソウルフードである焼きまんじゅうとフランス料理に欠かせないフォアグラを合わせました。

東京で勤務していた店で前橋出身のお客さまにどんな料理を作れば喜んでもらえるか伺ったところ、「焼きまんじゅうを使った料理を出すといいよ」とアドバイスをいただきました。すぐに市内の店の焼きまんじゅうを取り寄せ、さらに実際に食べ歩いて自分のイメージに一番近いものをベースにアレンジを加えて作りました。

お陰さまで地元の方にも、焼きまんじゅうを知らない県外の方にも好評です。

▲手作りの焼きまんじゅうの生地にフォアグラを載せて

▲優しさを感じるセパージュのカウンター

――魚の仕入れはどのようにしていますか。海なし県ですから大変では?

群馬県産のギンヒカリやシルクサーモンも使っています。

海の幸は3つのルートから仕入れています。

一つめは東京で働いていたころからお世話になっている豊洲の業者さんです。日本全国、世界から最高の品が届きますし、不漁の時期でもある程度賄うことができるので重宝しています。

二つめは福岡で個人商社を営んでいる友人からです。長崎を中心に九州全域から獲れたての魚介を直送してもらっています。

三つめは銚子から。日本各地の漁港関係者と親交があり、季節のお薦めを教えてくれ、ほしい食材を探してくれます。

海なし県といっても輸送技術も保管技術も進んでおり、東京と変わらない鮮度で仕入れることができます。

それと、前橋で養殖した「まえばしヒラメ」も使っています。生きたまま仕入れられますので鮮度は申し分ない。ご好評いただいています。

――料理はもちろん最先端ですが、内装もすばらしいですね。茶室のようにまったく無駄のない研ぎ澄まされた雰囲気です。

店内は美しさをイメージしており、客席から厨房を見ても無駄なものが極力見えないような造りをしています。

「美味しいものを作りたい」という情熱と欲求が自分のエネルギーです。美味しさを求めるのはもちろんのこと、空間や盛り付け、オペレーションも大事にしています。

 

食とアート この街を動かす

――街を食とアートで活性化しようとする動きがあると言いました。実際に前橋で生活し、仕事をしてみてどう感じますか。

白井屋ホテルにあるザ・レストラン、まえばしガレリアにあるセパージュ。世界的にみても、地方にこれだけの建築とレストランが一つになった施設がほぼ隣り合わせであるのはすごいことだと思います。

加えて、名だたるアートがある。それらを見に来る美意識の高いお客さまが数多く来店します。味はもちろんですけど、見た目にも美しいと感じていただけるように意識しています。

都内や大阪から来られるお客さまで、初めて前橋に来たという方が多くいます。建物を見て、アートに触れ、料理を味わうという楽しみ方ができているようです。

2つあるからいいんですよ。楽しみが増える。前橋に行ってみようか、という話になります。

――そんな店がもっと増えるといいですね。

街中を散策していると、いつも行列ができるイタリア料理店があったり、居心地の良いカフェがあったり。新しくカレー屋さんもでき、街中に活気を感じます。

私もせっかく前橋に来たので、少しでもこの街のために貢献したいと考えています。

例えば、広瀬川沿いには美しい景色があるので、店を飛び出して小さな店に挑戦したり、新たな名物となるような料理を考えたり。街のイベントにも参加したいですね。

(写真提供・木暮伸也)

いしばし・かずき 1987年、千葉県生まれ。東京・有楽町のフランス料理店「アピシウス」で8年半修業した後、西麻布の三つ星レストラン「レフェルヴェンソンス」でセクションシェフを務める。2023年6月、「セパージュ」のシェフに就任する。

店舗情報

cepages(セパージュ)

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027-212-2990
住所 前橋市千代田町5-9-1
営業時間 18時~20時30分、21時~24時(バー)
定休日 不定休