interview
聞きたい
【聞きたい櫻井さん1▶︎ 】
天から授かった宝物 ハートマーケットを作る
2021.11.10
「ハートマーケット=心の市場」。何と心に染み入る素敵な名前だろう。代表の櫻井明さんは天からの授かりものというこの言葉を28年間、大切にしている。経営者として決して順風満帆ではなかった。運に恵まれず、人に裏切られ挫折も味わった。それだけに「ハート」を大事にしている。わずか8坪で始まった店は全国60カ所以上に広がった。
―「ハートマーケット」。素敵な名前ですね。
「今でこそいい名前だと受け入れられますが、28年前の創業当時はうさん臭い、変な名前だといわれましたよ。2軒目は『メイドインラブ』ですからね(笑)。心だ、愛だなんて、気恥ずかしいだろうって。
それが少しずつ変わってきて、2000年ぐらいから心や絆が大事だねという風潮になった。「めぶく。」もそうでしょう。会社経営でも何でも、根本ではそういうのが最も大切なんだということに、みんなが気付いたのです」
―命名の由来を教えてください。
「立て続けに起業に失敗し、家に引きこもっていた時期があった。30歳手前です。そんなとき、アパートの天窓から空を眺めていたら、突然、『ハートマーケット=心の市場』という言葉が舞い降りてきたんです。天からの授かりものだと感激しました。
生まれてからずっと、ジャイアンみたいな生き方をしてきた。友人も先輩も後輩も先生も、俺のジャイアンぶりを笑って許してくれ、そのまま成人してしまった感じ。18歳で金持ちになりたくて、勉強して、頭でっかちになっていた。何でもチャレンジし、失敗しました。
そんな時、ハートマーケットという言葉とともに、当たり前のことに気が付いたんです。みんなが俺を必要としていたのではなく、俺がみんなを必要としていたんだ。みんなのおかげで俺がいたんだと。そう反省すると、純粋にみんなに感謝したい気持ちになれました。
ハートマーケットを作りたいという夢が芽生え、急に自分の中でコンセプトが明確になりました」
―どういうコンセプトですか。
「お客さまの笑顔のための店。そういう店をつくり、ハートマーケットを実現する。儲けなくていい。お客さまを喜ばせればいいんだと気が付いたんですね。それでだめなら洋服屋をやめればいいと。
変な名前と思われましたけど、逆にこの名前には助けられました。まったく信用のなかったときだけど、メーカーに電話すると聞こえがいいというか、心に残る名前でしたので覚えてもらえました。後に占いをしたら、非常に幸運をもたらすといわれましたが。
とにかく、天からの授かりものを大事にしていこうと思いました」
―創業から30年近く。コンセプトはブレませんか。
「実はジレンマがあります。2016年度に売上高100億円を達成できました。企業体質が強くなれば、もっとお客さまに喜んでいただける会社になると信じていましたが、ちょっと大企業病みたいのが出てしまった感じなんです。
お客さま目線でなく、自分たち目線というのが知らず知らずのうちに出てしまった。一番大事なことを疎かにしてしまいました。
もう一度、創業期に立ち返って、ハートマーケット=心の市場を実現させたいという原点を取り戻したい。そう考え『リボーン(再生)』と名付けた改革を実践しています」
さくらい・あきら
1963年5月、安中市生まれ。農大二高卒業後、国鉄に就職する。洋服店勤務を経て起業する。2度の失敗を経て、ハートマーケットを創業。前橋市中心街に8坪の店を開く。
ハートマーケット
1993年11月創業。前橋、高崎市の中心街に出店から郊外型に移し、2002年、前橋市川原町に旗艦店を出店する。全国展開を加速させ、店舗数は全国に60店以上ある。売上高は16年度に100億円。
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