interview
聞きたい
【聞きたい小木津さん1 ▶︎】
5G活用し自動運転実験。 安全、快適な走行が可能
2021.08.16
「どこでもドア」が実現するかもしれない。そんな予言をするのは自動運転研究の第一人者、小木津武樹さん。群馬大大学院理工学府准教授にして、自動運転の導入を進める日本モビリティ役員。自動運転を分かりやすく説明してくれます。
―上毛電鉄中央前橋駅-JR前橋駅間で2月、自動運転によるバス運行の実証実験が行われました。
高速通信規格5Gを活用した全国初の試みでした。
実験は大きく2つ、5Gと自動運転の連携、それと前橋版MaaS(マース)の検証でした。
われわれが目指しているのは遠隔型自動運転です。運転席を無人にする代わりに、群馬大の遠隔管理室でオペレーターが監視し、必要に応じて操縦をする仕組み。運転に直接、人間が関与しないシステムです。
公道で導入するにはまだ高いハードルがあります。実に複雑なシーンが想定されます。駐車している車があって反対車線にはみださなければならないとか。
これを解消するのが遠隔管理です。人間がサポートする、人間と機械がうまくコラボすることで実現が可能になります。1人のオペレーターが複数台をサポートすることもできます。
5Gは大容量で低遅延のデータ送受信が特長で、自動運転への活用が期待されています。
―実証実験の結果はどうだったでしょうか。
5Gを使ったことでバスからの映像が明らかに高精細で遅延なく送られてきました。4Gによる従来方式に比べて2倍以上遠くの道路状況をオペレーターが認識することができました。
無人での運転でも安全かつ快適に走行できることが証明されたといえます。
―前橋版MaaS(マース)の方はどうでしたか。
財布を持たずに、公共交通を利用できるシステムです。実験でも好評でした。
電子決済が進んでいますが、慣れていないお年寄りは多いです。それならば顔パスで利用できればいいだろうと、顔認証による利用を試したわけです。
マイナンバーと対応させることで、利用者が何歳か、即座にデータが得られます。お年寄りなら無料にするなど、うまく設計できます。課題はコロナの影響でマスクを付けている方が多く、認証に手間がかかったことです。目の周りに特化して認証するシステムが必要です。技術的な検証をして導入を進めたいです。
―前橋市が掲げるスーパーシティ構想でも自動運転システムが含まれていますね。
膨大に集まるデータの利活用が期待されます。例えば自動運転による運行で得た乗客のデータを別のビジネスにつなげられれば、そこから生じた利益を還元し無料または安く乗車できるようになります。
逆に、他のデータを使って自動運転をより便利に効率的にできるかもしれない。公道での導入は法的問題がクリアされれば一気に進む可能性があります。
小木津武樹(おぎつ・たけき)
1985年8月、東京都生まれ。慶応大環境情報学部―大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士。東京理科大理工学部助教を経て、群馬大大学院理工学府准教授。
日本モビリティ株式会社
2020年7月、群馬大学発ベンチャーとして設立した。16年12月に発足した次世代モビリティ社会実装研究センターを研究機関と位置づけ、業界初の「無人移動サービス導入パッケージ」を構築、自動運転の社会実装、無人移動サービスの導入を支援する。