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『わたしたちの前橋』覚えてる?
17版でたどる街の記憶

2026.08.16

『わたしたちの前橋』覚えてる?
17版でたどる街の記憶

 前橋市の小学3、4年生が使用する社会科副読本、「わたしたちの前橋」の大特集展が、岩神町の総合教育プラザで開かれている。社会科が生まれた歴史的背景や副読本の意義、「わたしたちの前橋」の各版の内容の変遷を詳しく解説している。子どもたちに訪れてもらえるよう8月中は無休。「小学校時代を前橋で過ごした人が学んだ身近な副読本。子どもも大人も、そして学校の先生にも見にきて欲しい」と前橋市教育支援課教育資料館担当、古谷哲宏さんは呼びかけている。
(取材/柁原妙子リポーター)

昭和、平成、令和の前橋を一望

 会場の3面を埋めるように解説ボード19枚が並ぶ。はじめに、社会科が生まれ、副読本が作られるようになった経緯を紹介。「わたしたちの前橋」は1957(昭和32)年の初版から2020(令和2)年の第17版まで、各版の実物を展示。掲載内容の特徴や移り変わりを、当時の写真とともにたどることができる。

 古谷さんは「来場者の感想は『懐かしい』と『記憶にない』に分かれます」と話す。

 見覚えのある表紙に足を止める人もいれば、記憶になくても、自分が小学生だった時期の一冊を探す楽しみがある。手に取り、ページをめくって開いたような展示方法は、そのころの街並みや暮らしがよみがえり、前橋の変化を自分自身の記憶と重ねて見ることができる。

 第2版(1961年)には中央通り商店街、第10版(1986年)には岩神町商店街が登場する。店の並びが一軒一軒細かく記され、小売店や食堂が軒を連ねていた当時の街の様子を知ることができる。

 取り上げる地域には、編集に携わった教員の視点も反映されている。古谷さんは「毎回、市内の社会科教員9人が選ばれて執筆してきました。担当した先生の学校周辺の町が、詳しく調べられています」と話す。

▲1961年の中央通り商店街

▲古谷さんは15版と17版に携わった

 フロア中央には、かつて使われていた農具や木工用具、釜、洗濯道具などが並ぶ。

 昭和30年代の前橋では木工業が盛んで、天川大島町には木工団地も形成された。主に家具が作られ、会場にはチェーンソーが普及する以前に使われていた大型ののこぎりなども展示されている。

 農業が、養蚕から次第に野菜の生産に移り、野菜の種類もトマトからキュウリへと変わっていったように、工業、商業、防災なども時代とともに内容が変化していく中、初版から変わらず掲載されているのが天狗岩用水だ。長年、社会科見学の行き先としても親しまれてきた。

 展示の終盤には天狗岩用水の特集コーナーを設置。利根川の取水口から流末までを示した地図をはじめ、誰が、どのように造ったのか、その歴史を分かりやすく紹介している。希望すれば関連動画も視聴できる。

▲天狗岩用水の地理、歴史が学べる

教師の教育に懸ける熱意の形

 社会科は戦後の1947(昭和22)年に生まれた新しい教科だ。軍国主義から民主主義へと社会の価値観が大きく転換する中、「私たちはどう生きるか」を学ぶ教科として誕生した。当時は現在の道徳にあたる内容も社会科で扱っていたという。

 古谷さんは「資料からは、当時の文部省が新しい教科に込めた強い思いが伝わってきます。一方で、教員自身も生き方の根本となる価値観が大きく変わり、子どもたちにどう教えたらよいのか、戸惑いも大きかったようです」と話す。

 明治期の群馬県は、教育先進県として「西の岡山、東の群馬」とうたわれたという。県都・前橋でも、戦後の混乱の中、より良い教育を目指して先進的な取り組みが進められていたことが紹介されている。

 社会科では、地域の暮らしや産業を身近な題材から学ぶ。ところが、全国共通の教科書だけでは、例えば港町の暮らしを海のない前橋の子どもたちが具体的に理解するのは難しい。こうした地域ごとの違いを補うため、社会科の誕生から10年後、副読本の活用が始まった。

 「わたしたちの前橋」も、教科書の改訂に合わせて版を重ねてきた。編集を担ったのは、その時々に選ばれた市内の社会科教員9人。担任を持ち、日々の授業を続けながら地域を調べ、原稿をまとめてきた。17版にわたる歩みからは、子どもたちに前橋をより深く学んでもらおうとする教師たちの熱意が伝わってくる。

▲往時の会議を記録していた谷先生

 企画展は毎年夏休みに開催され、子どもにもわかりやすく身近で地域に残したいものをテーマに、同館の収蔵品を中心に展示している。

令和8年度教育資料館企画展
社会科副読本「わたしたちの前橋」大特集

日時 7月21日(火)~9月30日(水)9時~16時30分
休館日 7、8月はなし/9月は土・日曜、祝日
会場 前橋市総合教育プラザ3階(前橋市岩神町3-1-1)
入場料 無料

※駐車場は建物の広瀬川を挟んで東側
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