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群馬県民会館の終幕こえて
前橋第九合唱団 揺れる想いを抱き歌う

2025.12.09

群馬県民会館の終幕こえて
前橋第九合唱団 揺れる想いを抱き歌う

 1973年から半世紀にわたり群馬県民会館で歌い続けてきた前橋第九合唱団。会館の廃止を受け、今年の演奏会は12月21日、昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)で開く。初めて立つ舞台には、長年の拠点を失った寂しさと、新たな環境に挑む期待が入り混じる。指揮者練習中の同合唱団を訪ねた。

ダイナミックな現田茂夫さんの指揮で

 「ここは思い切り大きな声で」「ここは優しく」。テキパキとした指示が飛ぶ。タクトを振るのは現田茂夫さん。神奈川フィル名誉指揮者として知られ、国内外の舞台で評価されてきた66歳のベテランだ。前橋第九を振るのは2021年以来、2回目となる。

▲指揮をする現田さん。NHKのFM「シンフォニー・コンサート」のパーソナリティとしてもお馴染み

 今年の団員は20代から80代まで134人。昨年よりやや減った。「県民会館の廃止とともに、一区切りつけた方もいたようです」と入団8年目の両角希理子さんはしみじみと話す。

 

▲運営にも関わる両角さん

 県民会館を失ったことに、最も打撃を感じているのは団員たちかもしれない。

 県民会館大ホールは定員2000人。ピットを使っても1700席あった。市民文化会館は1200席。

 「舞台から見える客席の数が違い、やはり寂しさを覚えます」と入団43年の狩野聡さん。

 ひな壇も大きく異なる。県民会館はコの字型で、全員が均等に指揮を確認できた。しかし市民文化会館は舞台幅の制限から一直線の配置のみ。中央と端では指揮の見え方に差が生まれるという。

▲「今年は勝手が違い、準備も大変」と話す狩野さん

平和への願いを込めて歌いたい

 今回のステージでは「第九」に加え、マスカーニ作曲の歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より「オレンジの花は香り」も披露する。イタリア語の発音に不安を抱えていた団員も多かったが、「日曜強化練習でイタリア人の先生に教えていただき、自信を持てました」と入団3年目の新井尚子さん。

▲「新たな舞台で思い切り歌いたい」と新井さん

 失った拠点への寂しさ、新しい舞台への緊張、そして歌う喜び。そのすべてを抱えつつ、134人は声をそろえる。

 「第九が掲げる自由・平等・博愛は、今の世界にこそ必要なメッセージ。平和への願いを込めて歌いたい」

前橋第九合唱団第53回演奏会

日時 12月21日14時開演
場所 昌賢学園まえばしホール大ホール
指揮 現田茂夫さん
管弦楽 群馬交響楽団
チケット S席5000円、A席4000円、B席3000円、高校生以下各500円引き
※チケットは昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)で発売中