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『小栗上野介』 待望の復刊
みやま文庫が増補改訂版を刊行

2025.09.03

『小栗上野介』 待望の復刊
みやま文庫が増補改訂版を刊行

 2027年に放映されるNHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』の主人公を描き、絶版となっていた『小栗上野介』(みやま文庫)の増補改訂版が完成した。旧版になかった詳細な年譜や前書きを加えるとともに装丁を一新させている。会員への配本とは別で、みやま文庫事務局や書店で販売する。

大河ドラマで注目集める

 『小栗上野介』は2004年、みやま文庫の第174巻として初版を刊行した。好評で2016年までに第2、第3版を出したが、在庫切れとなっていた。

 大河ドラマで小栗上野介が主人公として取り上げられることが決まって以降、購入希望が多く寄せられていることから復刊した。

小栗上野介学べる基本図書

 『小栗上野介』は高崎市倉渕町ゆかりの研究者3人、市川光一さん(故人)、村上泰賢さん、小板橋良平さん(故人)が小栗の本当の姿を伝えようとまとめた基本図書。

▲絶版となった『小栗上野介』

▲復刊した『小栗上野介』

 元倉渕中学校長の市川さんは「日本近代化のさきがけ」と題して、小栗上野介の生い立ち、初の歴史舞台となった遣米使節、対馬事件、横須賀製鉄所の建設、日本の近代化への貢献について解説している。

 東善寺住職の村上さんは「上州権田にかけた夢」として、幕府崩壊後の勘定奉行免職、幕末の経済人としての業績、権田村への移住、打ちこわし騒動、野にあっての人材育成、罪なくして斬られた最期と顕彰の歩みを記している。

 元倉渕中学教諭の小板橋良平さんは「小栗夫人会津へ-脱出路踏査記-」を担当。妊娠8カ月の小栗夫人が村人たちの助けを得て秘境・秋山郷を越え、会津まで辿り着く逃避行を描いている。小栗歩兵が会津軍に加わった経緯にもふれている。

東郷平八郎が子孫に礼

 新たに加えた年譜は18㌻にも及び、小栗に関する事項と国内外の動きを並列して表記している。

 「はじめに」と題した前書きは村上さんが執筆した。小栗の数多い功績の中から横須賀造船所の建設についてふれ、日露戦争の連合艦隊司令長官、東郷平八郎が自宅に小栗の遺族子孫を招き、「日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を完全に破ることができたのは、小栗さんが横須賀造船所を造っておいてくれたおかげ…」と礼を述べた逸話を紹介している。

 購入申し込みはみやま文庫ホームページか電話(027-232-4241)で受け付ける。みやま文庫取扱書店でも9月半ば以降に購入できる。

『小栗上野介』増補復刻版(みやま文庫第174巻)

市川光一、村上泰賢、小板橋良平著

B6判 254㌻

販売価格1500円(税込み)

会員価格1000円(同)

 小栗上野介(おぐり・こうずけのすけ)1827年、旗本の子として江戸駿河台で生まれる。幕府の勘定奉行など要職を歴任。1860年、日米修好通商条約批准のため米艦「パーハタン号」で渡米、帰路は地球を一周した。フランス式軍隊の整備、横須賀製鉄所の建設を手掛けた。薩長への主戦論を主張、罷免されて領地であった上野国群馬郡権田村に隠遁するが、1868年、薩長軍の追討令で捉えられ斬首される。