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聞きたい

【聞きたい 彩乃かなみさん ▶後編】
夢をくれた前橋の夏 
宝塚と故郷の味の記憶

2025.08.06

【聞きたい 彩乃かなみさん ▶後編】
夢をくれた前橋の夏 
宝塚と故郷の味の記憶

 宝塚歌劇団の元トップ娘役・彩乃かなみさんは、高校時代を過ごした前橋で偶然目にしたテレビ番組をきっかけに舞台の道を志した。夢に向かって突き進んだ青春の日々、芸の原点となった宝塚での経験、そして忘れられない故郷の味について聞いた。
(取材/阿部奈穂子、撮影/七五三木智子)

テレビで見た舞台に一目惚れ

――宝塚を目指すようになったきっかけは?
 前橋女子高に入学してすぐの夏休みに、NHKの衛星放送で偶然、宝塚の舞台を目にしたんです。女性が男役を演じる、得も言われぬ美しさに圧倒されて、「私もやりたい」と思いました。初めて明確な目標が生まれた瞬間でした。

――ご両親は応援してくれましたか。
 最初は「入れるわけがない」と猛反対でした。でも私も負けず嫌いなので、バレエを始め、土日は東京の宝塚音楽学校の受験スクールに通うようになりました。いつの間にか気付けば応援してくれるようになり、高校3年のとき、3回目の挑戦で合格しました。

 

▲「宝塚に進みたい」とは同級生にもほとんど話していなかったんですよ、と彩乃さん

――宝塚を目指しつつ、送っていた前橋での高校生活はどんなものでしたか?
 今思えば、少し異質だったかもしれません。夏でも長袖の制服を着て日焼けを避け、勉強より芸事の準備に集中。周囲からは「あの人どこへ向かってるの?」と思われていたと思います(笑)。

――ちなみに、前橋時代に好きだった食べ物は?
 焼きまんじゅうが好きでしたね。特に国道50号沿いの「たなか屋」さんの焼きまんじゅうが大好きで。前橋を離れてからも、あの味は忘れられませんね。

▲たなかや焼饅頭店 朝日町店 の焼きまんじゅう ©前橋まるごとガイド

宝塚とひめゆり、共通点とは?

――宝塚での経験は、8月21日から出演されるミュージカル「ひめゆり」の舞台にどう生きていますか?
 団結力や、連帯責任の意識を一番最初に学んだのが宝塚です。同期の失敗も自分のことのように捉える文化。「ひめゆり」も女性たちが支え合い、守り合いながら生き抜こうとする物語で、その感覚はどこか通じるものがあります。

――芸事の原点も宝塚に?
 そうですね。日舞、ダンス、歌、所作、すべて宝塚で学びました。今の自分が舞台に立てているのは、あの時代があったからこそです。

▲2008年、宝塚卒業公演千秋楽で

――宝塚とひめゆり、女性だけの団体という点も共通していますね。
 「か弱く守られる存在」ではなく、自ら考え、行動し、力強く生きるという意味では共通しています。国に与えられた使命を背負っていたかもしれませんが、それでも一人ひとりが懸命に生きていた。「女性の芯の強さ」が伝わるところも共通していると思います。そんな少女たちを支える上原婦長役。精いっぱい演じますので、多くの方にご覧いただければと思います。

【ミュージカル「ひめゆり」2025公演情報】

公演期間:2025年8月21日(木)~24日(日)
会場:シアター1010(東京都足立区千住3-92 千住ミルディスⅠ番館 11F)
脚本・作詞:ハマナカトオル・演出・振付:梅沢明恵・企画・製作・主催:ミュージカル座
公式サイト:https://musical-za.co.jp/stage/himeyuri2025/

あやの・かなみ

1976年、栃木県生まれ。小学2年で前橋市へ。前橋三中―前橋女子高―宝塚音楽学校卒。1997年、宝塚歌劇団で初舞台。月組トップ娘役となる。2008年退団。現在は歌手、女優として活躍。

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