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【萩原朔美の前橋航海日誌Vol.46】馬場川沿いの細道
2025.06.03
近所の散歩コースで、私が1番好きなのは、馬場川沿いの細い小道だ。勿論人しか通れない。小さな可愛い橋が幾つもあり、つい写真を撮りたくなってしまう。
原っぱが一箇所あって、そこに石仏が三体ある。草が狩られたり、枯れたりした時だけ姿を現す。今日は見えるか見えないか、考えながら歩くのも楽しみの一つだ。
多分、人は水の流れに沿って歩く時が1番心安らかになるのではないだろか。車道に沿って歩く。線路に沿って歩く。あるいは海岸沿いを歩く。山道を歩く。
それよりも、対岸に飛んで渡れるような、可愛い川の横を歩く方が気分がいいのだ。自分の身体の中を流れる川と可愛い川とが、同じリズムを刻んでいるような安定感。私はその道を通る度に、知らず知らず、無意識のうちに、童謡を口ずさんでいる。
その小道を抜けてさらに歩くと、今度は、オシャレなカフェがあり、整備された木製のベンチが出現する。そこで休めるのだから、理想的な散歩コースなのである。
Sakumi Hagiwara
萩原朔美(はぎわら・さくみ)
1946年11月、東京都生まれ。寺山修司が主宰した「天井桟敷」の旗揚げ公演で初舞台を踏む。俳優の傍ら、演出を担当し映像制作も始める。版画や写真、雑誌編集とマルチに才能を発揮。世田谷美術館に版画、オブジェ、写真のすべてが収蔵されている。著書多数。多摩美術大学名誉教授。2016年4月から前橋文学館館長(現在は特別館長)。2022年4月から金沢美術工芸大客員教授、2023年7月から前橋市文化活動戦略顧問。


