news

NEWS

群馬県民会館を解体へ
山本知事が「廃止」を表明

2025.05.15

群馬県民会館を解体へ
山本知事が「廃止」を表明

 存廃が問題となっていた群馬県民会館(ベイシア文化ホール)が解体されることに決まった。山本一太知事が5月15日、廃止する方針を発表、新たに近接する県立図書館を含む周辺エリアを「新しい文化拠点」として整備していく方針を示した。前橋市内で唯一の2000人規模のホールとともに、名建築とされた建物は姿を消す。

「役割を終えたと考える」

 山本知事は記者会見で「知事の責任、判断において廃止する方針を固めた。多くの県民の文化活動を支えてきた。ノスタルジーを否定するつもりはない。しかしながら、建設から50年が経過したいま、役割を終えたと考えている」と述べた。

 廃止の理由については、①大ホールの利用者がピーク時の4分の1程度に減少②50億円以上の多額の改修費―を挙げ、「県民全体の幸福度につながるか、改修する価値や必要性をいろいろな角度から議論したが見いだせなかった」と説明した。高崎芸術劇場ができ、ホールへのニーズが分散されているとも指摘した。

 県民会館の建物については、「リノベーションなどによる利活用は否定しない」としたものの、新施設を建設することから、解体は避けがたく、一部施設を歴史資産的に残す程度とみられる。

▲前橋第九合唱団の定演。再び開かれることはばいのか…

ハイブリッド型文化拠点

 文化振興の面から、県民会館を「潰したいと思っているわけではない」と強調。「音楽、映画、漫画を個人的な趣味として続けてきた私が文化を軽んずることはない」と強く否定した。

 新しい文化拠点については「文化やアート、学びといった機能がシナジー効果を生むハイブリッド型文化拠点を目指す」としている。

 山本知事は「ワイズスペンディング(賢い支出)と県民幸福度の向上を両立させ、『群馬モデル』と呼べるような拠点」と説明、一例として、音楽、ダンス、動画撮影などの多機能的なスタジオやライブハウスを挙げた。

2000人規模のホール消滅

 県民会館は老朽化が問題となり、2017年に大規模改修を計画したが、2020年、改修費に多額な費用がかかることを主な理由に一転して廃止の検討対象となった。

 小ホールは2022年3月末で閉鎖され、大ホールは2025年4月以降の予約受け付けを休止していた。

 前橋市内では昨年3月、前橋テルサが閉館となり、音楽、演劇をはじめとする舞台発表をするホールが軒並みなくなり、「ホール難民」が問題となっていた。

 市民団体が独自に試算し、少ない予算で改修させる案を群馬県に提出するなど、存続に向けて働きかけていた。

▲2000席収容できる第ホールが県都から姿を消す

群馬県民会館(ベイシア文化ホール)

 県土整備の一環として、明治100年にあたる1971年9月に完成した。場所は1910年に群馬県主催の一府十四県連合共進会が開かれ、群馬大学のキャンパスが置かれた跡地。設計は後に最高裁判所や警視庁本庁舎を手掛けた岡田新一氏(故人)。鉄骨鉄筋コンクリート造、地上5階、地下1階。延べ床面積は1万3330平方㍍。大ホール(2000席)、小ホール(500席)のほか、リハーサル室、楽屋、展示室、会議室、和室がある。