interview
聞きたい
【聞きたい 演芸おんせん 矢巻駿さん】
カズレーザーさんと同居 学んだお笑い道
2025.05.25
お笑いの世界に入って14年。正統派のしゃべくり漫才で勝負する「演芸おんせん」のツッコミ担当、矢巻さん。生まれ故郷の前橋のこと、芸人の世界の厳しさ、楽しさについて聞きました。
(取材/阿部奈穂子)
憧れのあだち充先生
――少年時代からお笑い芸人を目指していたんですか。
いや全く目指してないです。大学に落ちてしまって、でも家族からどこか学校に行けといわれて。人力舎のお笑い芸人養成所「スクールJCA」が5月入学だったんですよ。お笑いは好きだし、じゃあやってみるか、くらいの感じでこの道に 入って、もう14年続けてますね。
――高校は前橋商業高でした。部活は?
軟式野球部です。野球は小4の時からやってました。
――前橋商業高は当時、野球が強かったのでは?
硬式は僕らの1個下と1個上が甲子園に行ってます。あだち充先生が毎回うちわを書いてくださって。そのうちわ持って応援しに行ったこともあります。
あだち先生の「タッチ」を見ると、高校時代を思い出しますね。マンガに出てくる校舎も下駄箱の感じも、母校のままで。
▲前橋商業高時代を思い出す「タッチ」
――前橋で好きなお店とかありますか。
広瀬町の「焼き鳥一番」ですね。少年野球やってるときに、父兄がやたら打ち上げしたがるチームで、練習や試合が終わると昼から酒飲んでました、親がですよ。先日、20年ぶりぐらいで行ったらまだお店あって。ひと口食べたら、この味だっていうのを思い出して味覚ってすごいなと思いました。
あとは文京町の「シャンゴ」と「洋麺亭」。洋麺亭はLサイズ頼むと、この机ぐらいでかいパスタが出てくるんです。コンパでよく行ったのはもんじゃ焼きの「KANSAI」ですね。
▲新宿の劇場の入口で
頑張れば先がある道と知る
――お笑いの世界に入って14年、転機があったとしたら?
2015年からメイプル超合金のカズさん(カズレーザー)と一緒に住んだことですね。お互い売れてなくて、劇場の喫煙所で二人きりになって、連絡先とかも知らなかったのに、ノリで一緒に住んじゃいますかみたいな感じになって。ワンルームの事故物件をルームシェアすることになったんです。
その年のM-1で、僕ら「演芸おんせん」は3回戦で負けちゃったんですけど、メイプル超合金は決勝まで行って。なんか僕それまでM-1って、やらせだと思ってたんです。でも、こんな身近で面白い人が、ちゃんと面白かったらいけるんだっていうのに気づけて、そこからいままでよりも真剣にお笑いをやるようになりました。
――それまではそんなに頑張ってなかったんですか?
頑張ってなかったですね。ライブとかは出てましたけど。その先が見えないで頑張ってたって感じです。それが明確に道が見えたっていうか。この道は頑張れば、先がある道なんだと思いました。
▲演芸おんせんで活躍
――M-1の決勝まで進み、カズさんは出ていったんですか、ワンルームの事故物件を?
ええ、それで引っ越すってなって、「一緒に来るか」って言われて。いまも一緒に住んでます。でも「俺は2万円しか家賃払えません」って言ったら、「じゃ、俺と相部屋な」っていわれて。いまだにカズさんと相部屋なんです。
――今度はワンルームじゃないんですね。
3LDKです。
――そこに2人で住んでる?
あと、トレンディエンジェルのたかしさんと、三日月マンハッタンの仲嶺(巧)さんも住んでます。でも、仲嶺さんはまだ1回も家賃払ってないんです。僕より貧乏なんで(笑)。
▲新宿・歌舞伎町の路地で
奢ってくれた芸人ベスト3
――カズレーザーさんってどんな性格ですか?
めっちゃボケますね。賢くて明るいおじさんです。一緒にいると何にも調べなくていいんですよ。ニュースとか見てて、「これってなんすか」って聞くとなんでも教えてくれるから。
とにかく勉強してます。ネットニュースもよく見てますし。こっちがバカになりますね。
――そんな皆さんから刺激受けてるんですね。
そういう意味では一番、刺激を受けてるのはオズワルドの伊藤かな。週4くらいで飲みに行ってて。これまではM-1で同じくらいの成績だったのに、2019年に決勝まで行って、急に売れ出して。
後輩なんで、それまでは僕が飯代出してたんですけど、売れてから向こうに全部出してもらって、一昨年は1年間で400万ぐらい、昨年は280万ぐらい出してもらっていて。恩返ししなきゃなっていうのがいまのモチベーションです。
――よく金額を覚えていますね。
いろんな先輩方とか友達とかにごちそうになることが多いんで全部、自宅のPCのExcelにメモってるんです。それを計算したら昨年は1200万ぐらい奢ってもらっていて。いままでの分まで考えたら、早く売れないと恩返ししきれないですね、2億円ぐらいになりそうなんで。
――奢ってくれたベストスリーって誰でしょう。
1位はオズワルド伊藤、2位は錦鯉の渡辺隆さん、3位は薄幸(なごん)のみゆきさんですかね。
奢ってくれたから言うわけじゃないけど、錦鯉がM-1で優勝(2021年)したのは嬉しかったです。一緒に劇場にずっと出ていて、優勝して。一緒にやってきた先輩たちが売れていくのは、励みになりますね。モグライダーもそうですし。
▲新宿・歌舞伎町の路地で
目指すはM-1決勝進出
――いままでで一番印象に残っているネタってなんですか?
「ノーバンしゃぶしゃぶ」ですかね。初めてテレビやったネタなんですよ。テレビでネタやるまで10年ぐらいかかってるんで。初めてM-1の準々決勝に行ったのも多分そのネタです。変なネタでしか行ってないんですよね、「ノーパンしゃぶしゃぶ」と、あと「タバコスイートピー」っていうやつでしか行ってない(笑)。
――よく出る劇場はどこでしょう。
新宿Fu-、新宿バティオス、新宿バッシュ‼、新宿ブリーカーとか。新宿が多いっすね。
――ずばり目標は?
M-1で決勝に行きたいです。なにせ恩返しに2億円かかるんで。あと3回出られるので、なんとか決勝まで行きたいです。
――芸人になりたいという、前橋の中高生にアドバイスをするとしたら。
絶対やめた方がいいと思います。だっていまから芸人になったら絶対楽しくないんで。コンプライアンスとかも厳しいですし。
いまは個人でもできるじゃないですか。ネットとかで。その方が人気者になりやすいんじゃないかな。わざわざ養成所とかにお金払って東京出てきてやらなくてもいいと思いますよ。
でもどうしてもネタやりたいんだったら、芸人は楽しいんでオススメです。
――さっき楽しくないとおっしゃいましたよね。
あくまでも昔に比べてです。僕、個人的にはめっちゃ楽しいんですよね。周りは面白い人しかいないんで、こんな良い環境ないですよね。昨日もカラオケしながら、ゲラゲラずっと笑ってました。
でも、いま18歳とかだったら芸人じゃなくて、YouTuberやTikTokerを目指していたんじゃないかな。
やまき・しゅん
1990年、前橋市生まれ。桂萱中→前橋商業高卒。お笑いコンビ「演芸おんせん」ツッコミ担当。マセキ芸能社所属。2011年、杉山栄一さんとフカミドリ結成。20年、演芸おんせんに改名。2022年、M-1準々決勝進出


