interview
聞きたい
【私の一冊】『バスは北を進む』
lyrical school minanさん
2024.10.18
夢中になって読みふけった本、人生を変えた本、窮地を救ってくれた本、一生大切にしたい本etc. lyrical school minanさんのとっておきの1冊を聞いたところ、意外な素顔が見えてきました。
過去の記憶と共に生きていく
―『バスは北を進む』はどんな本ですか。
人間の中で一番おもしろい人と思っている、せきしろさんの書いたエッセイ集です。せきしろさんは自由律俳句詩の第一人者で、エフエム群馬の私の番組「lyrical school minanのLet’s チルアウト」の構成もしていただいています。
―この作品のどこに惹かれたのでしょう。
せきしろさんは「記憶の人」。本の中には北海道で過ごした幼少期から大学時代までのできごとが詰まっています。その記憶のきめ細やかさといったら…。
ささいなひと言で人を傷つけたり、傷ついたり。恥ずかしかったり、辛かったり。何十年も心に残っている物語がつづられています。
―特に印象的だったエッセイは?
「ふたりの友達」というエッセイです。点数の悪いテストを木の根っこに埋めていたせきしろさん。その現場を、自分が下に見ていた女の子に目撃され、「ちゃんと持って帰らなきゃダメなんだよ」と言われてしまう。ばつが悪いうえに、自分より下の子に逆転されたような気持ち…。わかる、わかるって思いました。私も出来の悪いテストはこっそりどぶに捨てていましたから(笑)。
―共感したんですね。
そうです。私も過去の後悔や反省など日々記憶に苛まれながら生きています。この本を読んで、「無理に記憶を消し去らなくていいんだよ。共に生きていけば」と背中を押されたような気がしました。
共感し過ぎて、胸が苦しくなることもありますが、荒療治だと思って、繰り返し読んでいます(笑)。
『バスは北を進む』
著者・せきしろ
発行・幻冬舎文庫