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【体験ルポ】赤城南麓に誕生
3つの古民家ホテルを巡る

2024.04.14

【体験ルポ】赤城南麓に誕生
3つの古民家ホテルを巡る

赤城南麓に建つ空き家をリノベーションし、4月13日、「赤城宿」と総称される3つの古民家ホテルが誕生した。1日1組限定、一棟貸しというスタイル。19日から予約受付が始まる。運営は古民家を活用した宿泊事業を進める「LOOOF(るうふ)」(山梨県笛吹市)。同社のスタッフさんに案内してもらい、3つのホテルを見学してきた。赤城の新名所になりそうな、充実した施設内容をリポートする。
(取材/阿部奈穂子)

書院造りの母屋と蔵が宿泊施設に 「清芳山荘」

まず訪れたのは、赤城県道沿い、赤城カントリークラブの手前に建つ「清芳山荘」。広大な敷地には何本もの桜が咲き誇り、書院造りの立派な母屋がある。

この家は1913(大正2)年に建造。日銀副総裁、木村清四郎さんから、前橋で不動産管理業を営む江原本家が譲り受け、1985年に東京から赤城山に移築した。敷地内には朝日町にあった江原本家の蔵も移されている。

「大切に維持してきた資産を、前橋のために役立てたい」。江原本家グループ代表、江原有香さんの意向で、母屋と蔵2棟が宿泊施設に変貌した。

▲日銀副総裁、木村清四郎さんから譲り受けた母屋

▲2階建ての蔵も1棟貸しの宿泊施設に

母屋はまるで文化財のようだ。長い畳廊下や、職人が一つひとつ手作りした手延べガラスに驚く。いまの時代、同じものを再現するのは不可能。かつて応接室だった空間をリノベーションした主寝室も美しい。

古き良きものを残しつつ、快適に過ごせるよう、断熱性を高め、水回りは最先端の設備になっている。

風呂もすごい。浴槽はヒノキづくりで、床は畳張り。しかも、サウナまで完備されている。なんて贅沢な宿なのだろう。定員は2~7人で、1人1泊3万5000円~(税別)。

 

▲縁側廊下からは桜が見えた

▲照明や窓枠が印象的な主寝室

▲ヒノキ風呂は畳敷き

蔵を使った宿も思いがけない空間だった。1階はリビング、2階は寝室にリノベーションされている。

寝室には大きなスクリーンやレコードプレイヤーが置かれ、のんびり過ごせそう。天井の太い梁も見事だ。蔵の中は包まれている感があり、心が落ち着く。

▲蔵の2階の寝室

ベイシアの研修施設をリノベーション 「珠蕾山荘」

続いて訪れたのは、「清芳山荘」から車で2、3分のところにある「珠蕾(しゅらい)山荘」。

門を入り、宿まで向かう景色の美しさにまず驚く。背景には緑の森、近景には桜。シンボルツリーの大きな梅の木もある。

▲門を入るとこの光景

建物はベイシアグループの研修施設として1986年に建造されたもの。玄関から2つの棟に分かれ、2組が宿泊できるようにリノベーションされている。定員は2~7人で、宿泊料は1人1泊3万5000円~。

それぞれの棟のリビングにある、岩肌をイメージした造作壁が印象的だ。アンティークな家具との相性もピッタリ。

そして目玉は屋外のサウナ施設だろう。独立したサウナ棟とウッドデッキの上に設置された水風呂、チェア。赤城の風に吹かれながら思う存分、サ活を楽しめる。

 

▲珠蕾山荘の外観

▲造作壁は岩肌をイメージ

▲屋外のサウナ施設

レーシングドライバー、太田氏の別邸
「旧太田邸」

最後に訪れたのは、嶺公園の西側にある洋館「旧太田邸」。元フェラーリのレーシングドライバーで前橋市出身の太田哲也さんが前橋市役所に寄贈した別宅を、ホテルにリノベーションした。

小川沿いに建つため、絶え間なく水音が聞こえるのが心地いい。館内には現代アートが数多く飾られている。

 

▲小川沿いに建つ洋館

▲暖炉のあるリビング

▲パーマンの原画のセル画も飾られている

広々した館内だけではなく、BBQのできるテラスや、屋外のサウナ棟、川遊びのできる東屋なども完備され、宿泊しながらアウトドアを楽しめるのがこのホテルの大きな魅力。親子連れで訪れたら、最高に楽しいだろう。

定員は2~7人で、宿泊料は1人1泊2万5000円~。

 

▲屋外のサウナ施設

▲テラスでBBQを

地域の人と一緒に作っていきたい

これら3つの古民家ホテルは「赤城宿」と総称される。5月にはさらに3軒、赤城南麓の古民家リノベーションが始まり、赤城宿はどんどん大きくなっていく予定だ。

「手つかずの自然が残る赤城南麓は、私たちの本社のある山梨県芦川町に似ている。落ち着くし、親近感を感じます」と、企画から設計施工、運営までを担う「LOOOF」代表取締役、保要佳江さん。これまでに数多くの古民家のリノベーションを手掛けてきたが、「こんなに立派で、良い状態に維持されていた物件は初めて。家主さんの想いを感じます」と振り返る。

▲「LOOOF」代表取締役、保要佳江さん

赤城宿には、地域の人と協働して地域の未来を作っていく「地かた研究所」という施設もある。「まずは宿。それに付随し、レストランやバー、カフェなど赤城南麓エリアをより楽しめるような施設を、時間をかけて、地域の人と共に築いていきたいと思います」