interview
聞きたい
【聞きたい新井さん2▶︎ 】
「三つ編みができました」 喜びの声が成長の糧に
2021.12.14
娘さんが小児脱毛症だった。母子で泣いた。小学校入学前に何とかしてやりたい。それが起業の原点だった。使いやすくて、手入れしやすくて、そして、おしゃれ。夢のようなウイッグを作り上げた。前橋リリカにウイッグ専門店を構える新井舞さんの物語です。
―子供用のウイッグ(かつら)に特化しての起業。順調なスタートだったのでしょうか。
「それが大失敗でした。2018年6月に都内で新商品のお披露目会を兼ねて販売を開始する計画だったのですが、サイズが小さすぎて、多くのお子さんが使えなかったのです。うちの子のデータしか取らなかったのが原因でした。急きょ販売は取りやめとなりました。
それで、学校の友達に協力してもらい、50人ほどのデータを集めました。年齢別に頭回りを測りました。その結果、頭回りを4㌢ほど調整できるようにして2サイズ作ったら、大半の子が使えるようになった。安全性にもこだわり、JIS規格にも適合しました。やっと秋から発売することができました」
―反応はどうだったでしょう。
「まず娘にかぶってもらいました。そうしたら、『うん、これなら大丈夫だわ』と。これでいけると、自信になりましたね。
『ファンキッズ』と名付け、ネット販売しましたが、反響がすごかった。まず、『子供がウイッグを付けるのを嫌がらなくなった』と感謝されました。従来の製品はチクチクして負担になりました。
毛質も子供の髪のようにしました。『三つ編みができる』『かわいい髪型になった』といった喜びの声が寄せられました。うれしかったですね。ウイッグを付けるのは恥ずかしいのを隠すためではなく、おしゃれを楽しんでいただきたかったので」
―起業の成果を「群馬イノベーションアワード(GIA)」で発表し、ファイナリストになりました。
「感激しましたし、自分にもびっくりしました。あんなに大勢の人の前でプレゼンできるとは。娘のおかげで大きく成長させていただきました。
GIAに出たことで、いろいろなメディアに取り上げられるようになりました。『中学生や高校生用はありませんか』とか、『試着できますか』といった相談も届くようになり、ネットだけでは限界があると実感しました」
―それで、実店舗を出したわけですね。
「前橋リリカに店を借りました。2020年11月です。お店を出したことで、いろいろなメリットがありました。お客さまと話をすることで、改良する点、もっと使い勝手がよくなることを教えてもらえました」
―上昇機運に乗りましたね。
「ところが、コロナで一転しました。商品がなくなってしまったのですよ。海外で生産していますが、まったく作れなくなり、ソールドアウト。落ち込みましたよね。やめようかな、とも思いました。
外出もままならず、鏡を見たらボロボロ。リフレッシュがてら美容院に行きましたら気が晴れた。そこで気付いたのです。みんなきれいでいたいのだと。髪で悩んでいる子供や大人もいる。お店もしっかりやらなくちゃ、と考え直しました」
新井舞(あらい・まい)
1986年3月、太田市生まれ。2018年、ウイッグ専門ネットショップ「ドリームアソート」を創業。2019年、「群馬イノベーションアワード」ファイナリスト。2020年、前橋市リリカ内に実店舗を開店する。前橋市在住。