フロリレージュ:川手寛康シェフ/ザ・レストラン:片山ひろシェフ
師弟で繰りなす「美食の饗宴」
東京・外苑前にあるフランス料理の名店「フロリレージュ」、川手寛康シェフと白井屋ホテル「ザ・レストラン」、片山ひろシェフによる「美食の饗宴」が8月31日、白井屋ホテルで開かれた。前橋市を中心にした群馬県産の選りすぐりの食材を使い、独創的なコースに仕立てた2人のシェフ。饗宴の舞台裏と今後の展望を聞いた。
―群馬県産の食材の評価を聞きたいですね。
川手 片山シェフから随分紹介してもらいました。ポテンシャルが高いのは知っています。私は「海のない京都」だと評価しています。これだけ寒暖差があり、陽光に恵まれた土地で育つ野菜。海がない代わりに、川魚や山の幸に恵まれ、独創的を超えている、群馬の食材。これを使ってどんな料理を生み出すか。これから先は料理人次第です。
―川手シェフの店、外苑前の「フロリレージュ」でも使いますか。
川手 少しずつですが。本当はもっと使いたいのですが、小さい生産者が多いので。うちは1日50人くらいのお客さんが入りますので、まとまった量が必要なんですね。ここ(白井屋ホテル「ザ・レストラン」)と取り合いになってはいけませんからね。
―前橋にフレンチが広がる可能性は?
川手 いい食材がある地域は日本にいっぱいあります。フレンチが根付くかは、いい料理人が覚悟を決めて料理を作るかどうか。いい料理人が集まるような店に片山シェフが作っていけば、前橋は食の街になる。可能性として十分ありますね。
―日本のサンセバスチャンを目指そうという動きがあります。
サンセバはまさにそんな街ですね。あれだけの美食の街はないでしょう。かつてはビストロしかなかったのに、いい料理人が集まり最先端の店が加わってミックスアップされた。典型的な成功例です。
―ジビエはお好きですか。
川手 めちゃくちゃ使います。群馬に食材を見るようになったのは東北大震災の後でしたので、(放射性物質の関係で)ジビエの食材は手にすることはできませんが、話を聞く中で、ジビエの文化が根付いていたんだなという気がします。機会に恵まれれば、群馬から取り入れたいですね。
―美食の饗宴ではノンアルコールでペアリングしました。
川手 すごく難しいんです。アルコールが入っていると骨格がありますが、ノンアルコールは骨格がないので、成熟させるには糖度や旨味、苦みのバランスを取るのが大変。ソムリエの児島由光君はうちでも修業しました。頑張りましたね。
フランス料理に群馬の地酒
―店では日本酒をペアリングされていると聞きました。
川手 日本酒を出し始めてもう12、13年になります。23歳でソムリエの試験を通り、自分の店を出すころには少し普通のワインのペアリングに飽きてしまったんですね。家で楽しむときはもっと自由な飲み方をしていました。真夏の昼下がりなら、ギンギンに冷やした白ワインにハーブや果物を入れたりとか。日本酒はその延長戦上で出すようになりました。
―すぐに受け入れられましたか。
川手 当初はお客さまからお叱りを受けたこともありました。それは、まだまだ濃縮させた料理のテクニックしか持ち合わせていなかったから。日本酒に合わなかったのですね。料理の技法が変わったことで、合わせやすくなったと思います。
ワイングラスに注いでお出ししますが、ある料理編集者の重鎮は「すばらしいブルゴーニュですね」とほめてくれました。「日本酒です」と言えなかったですよ(笑)。群馬の地酒も素晴らしいのがそろっていますので、ぜひ、お試しください。
ミシュランで2ツ星獲得
川手 寛康 (かわて・ひろやす)
洋食のシェフだった父親の影響で料理の世界に入る。都内の名店で腕を磨いた後、フランスに渡り、星付きの店で修業。帰国後、「カンテサンス」のスーシェフを経て、2009年、「フロリレージュ」を開店する。2018年、アジアベストレストランで第3位。ミシュランガイドで2ツ星を獲得する。