interview
聞きたい
【聞きたい宮田裕章さん2▶︎】
デジタルは地域を繋げる
2023.02.07
前橋のサイズ感に魅力的な可能性を感じると評価する宮田裕章さん。デジタルの力で地域と地域を繋げ、新しい未来を創るチャレンジをすべきだと強調します。めぶくIDは全国の都市の羅針盤になると太鼓判を押します。
デジタル田園都市構想に期待
―デロイトトーマツが前橋に進出した。さらに熱視線を送るIT系企業があります。なぜ、前橋に?
一つは集う人材じゃないでしょうか。教育は1日にしてならず。福田尚久さんが理事長を務める前橋工科大があり、育成された人材がそろっている、そこが第一です。
さらに、仕事が生まれる可能性があるということ。デジタル田園構想のチャレンジの中で、新しい可能性が作られるということは重要なファクターです。
―全国に多数ある地方都市の中で、前橋市がデジタル田園都市構想に手を挙げ、採択された。どう評価しますか。
地方創成はその地域だけよければいいという話ではない。都市化や一極集中は産業革命以来、100年続く大トレンドです。
効率よく労働力にするには、人々を工場や会社の近くに住まわせて都市を作っていく。この効率性から逃れられる論理があるのか。一極集中すればするほど、力が増していく流れの中で、コロナが変化のきっかけになるかどうか。いろいろな分析があるが、一極集中に関しては解決の見通しは立っていない。
東京に対して、各地方都市が個別にやっても一極集中の流れは崩せない。東京がその規模ゆえチャレンジが難しいことはいっぱいあります。地域だからこその提案を重ねて未来を創ることは大切です。
全国的にみても、前橋のめぶくIDだったり、会津若松市のデータの仕組みは大切です。デジタルは地域を超えて繋げられる。めぶくIDが成功したら、それをいろいろな地域にインストールしていけばいいんですよ。地域同士が繋がりながら、新しい未来を創っていく。繋がりを前提としたチャレンジをすべきです。
新しい波紋を起こすのはルーラルだからできることもあるし、前橋のようなサイズだからできることもある。そういう意味ではめぶくID及び新しいコミュニティーをつくる取り組みは魅力的ですし、他のエリアにとって羅針盤になる。
重要になる多様性への配慮
―具体的にデジタルを使うと、どう便利になりますか。
デジタルの本質は繋がりです。人と人、人と世界を繋ぐのにデジタルは力を発揮する。
例えば、コロナ対策の給付金でも、デジタルが十分確立できていなかったから、配るのに数カ月かかり、1500億円もの追加コストがかかった。デジタルでつながっている国は数日で終わったのです。
さらにいうと、いままでのような一律でない提供の仕方ができる。家庭の痛みは一軒一軒異なっています。例えば、めぶくIDにマイナンバーが繋がっていれば、それに配慮して、必要な人に必要なタイミングで、必要な金額を申請される前にプッシュ型で届けることができます。多様性に配慮しながら、誰も取り残さないことが可能となります。
デジタルを少し前のSF的なディストピアの感覚でとらえる人が残念ながら多いのが現状です。デジタルは多様性に配慮しながらいままでできなかったことをする手段。何を実現するか想像することが大切です。その中で多様性への配慮はすごく重要になります。
みやた・ひろあき
1978年生まれ。東京大大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。保健学博士。専門はデータサイエンス、科学方法論。慶應義塾大医学部医療政策・管理学教室教授。2025年の日本国際博覧会(万博)テーマ事業プロデューサーを務める。