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野村たかあきさん「くじらのなみだ」原画展
フリッツ・アートセンターで10月16日まで
2022.09.21
野村たかあきさんは前橋市在住で、日本を代表する絵本作家、版画家。新作絵本原画展「くじらのなみだ」が10月16日(日)まで敷島町のフリッツアートセンターで開かれている。福島のいわきでクジラ漁を受け継いだ少年の心の葛藤を描いた原画13点。野村さんに見どころを聞いた。(取材/中村ひろみリポーター)
かつて賑わったいわきの浜のクジラ漁
―「くじらのなみだ」は東日本大震災から10年を契機に出版されたそうですね。
作者は福島県いわき市小名浜の漁業の歴史や広く文学にも携わってきた小野浩さんです。クジラ漁は和歌山県が有名ですが、いわきも、江戸幕府からクジラ漁を許された地域でした。現在は行われていませんが。企画を立ち上げた後、震災があり、小野さんとのディスカッションも途切れ途切れになりましたが、震災10年を機会に出版することにしました。
―少年・又吉がはじめての漁で子クジラを仕留めますが、なかなか辛いお話です。
クジラは食べるだけでなく、脂が使えたり、ヒゲや骨がいろいろな製品に生まれ変わるので、一頭捕れると、しばらく村中が潤ったそうです。逆に捕れなければ、ひもじさが続く。漁自体もとても危険で、クジラが船に体当たりしたり、漁師が海に放り出されたり、常に死と隣り合わせです。
又吉は村人の願いを一心に受けて、子クジラをもりで仕留めます。そして子どもを心配して船に近寄る母クジラと漁師が格闘しますが、力尽きた母親は海深く沈んでしまいます。
版画家・野村さんがこだわった「黒」
―村が歓喜に沸いたその夜、又吉はひとり浜辺に現れます。
悶々とする又吉の心情をどのように表すか、いちばん考えました。そして「黒」を基調にしようと思いました。当初は版画にする予定だったのですが、デリケートなテーマには、もっと繊細な線が必要と気づき、色鉛筆の黒と墨で描くことにしました。鉛筆では線が硬くなるので、色鉛筆を使ったのです。
海の暗闇とクジラの黒、又吉の心の中、すべてが同化するような「黒」にこだわりました。
―生きるためにクジラを捕ることは許されるのでしょうか。
小野さんも私もずっとそのことを考えましたが、結論は出ませんでした。きっと延々と考え続けることなのでしょう。
そして最後にひとつの言葉を、絵本から飛び出すように載せています。絵本に留まらず、この言葉を私たちは、考え続けないといけない、そう思ったからです。ぜひ、手にとってみてください。
『くじらのなみだ』野村たかあき絵本原画展
フリッツ・アートセンター
- お問合せはこちら
- 027-235-8989
住所 | 前橋市敷島町240-28 |
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営業時間 | 〜10月16日(日)11:00〜18:00 |
定休日 | 火曜(祭日の場合はその翌日) |
ホームページ | http://theplace1985.com/ |
入館料 | 無料 ※駐車場は混みあうことがあるため、なるべく近隣の敷島公園公共駐車場を利用のこと |