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萩原朔太郎賞に井坂さん
過去最高齢、待望の受賞
2026.09.03
現代詩を対象にした第34回萩原朔太郎賞は井坂洋子さん(76)の『文鳥』に決まった。選考委員会が9月3日、前橋文学館で開かれ、候補作に推薦された6作から選ばれた。過去最高齢での受賞。井坂さんは「憧れの賞をいただくことになりまして、とてもうれしく思っています」と喜びのコメントを寄せた。
母の子宮は「防空壕」
井坂洋子さんの『文鳥』は、母との死別を大きな軸に、生と死、母と娘のつながりを見つめた詩集。亡くなった母の身体に向けられるまなざしは、母の子宮を自らの生命の原点として捉え直し、ときに身を守る「防空壕」のような存在として浮かび上がらせる。身近な動植物や日常の風景、記憶と身体感覚を自在に行き来しながら、母から受け継いだ生命と、失われたものへの思いを独自の言葉で描き出している。
▲受賞作『文鳥』
前作『七月のひと房』から9年ぶりの詩集。1980年代のデビュー以来、表現を変化させながら詩と向き合ってきた井坂さんの、一つの到達点といえる作品集と評価されている。
選考委員の一人で井坂さんを「憧れの詩人」と慕う杉本真維子さんは「こういう表現をしていいんだと驚かされていた。(受賞作は)知性と感性がいいバランスで、刺激を受けました」と絶賛していた。
▲記者会見する朔太郎賞選考委員
萩原葉子さんの遺作を参考
収録されている詩のうちの『花の向き』は朔太郎の長女である萩原葉子の小説『朔太郎とおだまきの花』の中で、朔太郎が死の床で「オダマキが見たい」と言った話を参考に書いている。
葉子の長男である前橋文学館特別館長、萩原朔美さんは「体が動かない時に書いた。とても完成できないと思ったが、死後に出版された。よく出版できたと思う。(朔太郎賞となった井坂さんの)詩集に反映されて感慨深い」と感傷的に振り返った。
▲『花の向き』の一部
▲母親の遺作について語る萩原朔美さん
10月31日に朔太郎賞贈呈式
萩原朔太郎賞は日本近代詩に大きな功績を残した前橋市出身の詩人、萩原朔太郎の業績を顕彰するとともに、近代詩の発展に寄与することを目的として、市制施行100周年の1993年に制定した。
主催は前橋市と萩原朔太郎賞の会。東和銀行が協賛している。
今回は昨年8月1日から1年間に発表された作品を対象に選考した。
井坂さんには正賞としてブロンズの萩原朔太郎像と副賞100万円が贈られる。贈呈式は10月31日、前橋文学館で開かれる。
※井坂さんの写真は前橋文学館提供。
萩原朔太郎賞受賞の言葉
憧れの賞をいただくことになりまして、とてもうれしく思っております。私は萩原朔太郎の詩に魅きつけられながらも、室生犀星の詩に親しんでまいりました。が、このお二人の友情の上に、現在に至るまでの新しい詩の穂先が、時代の風になびいてきたことを思います。その大きな流れの、ひとつの穂となり得るかどうか、自分に課せられた荷におののき、気を引き締めております。ありがとうございます。
井坂洋子(いさか・ようこ)1949年12月、東京都生まれ。上智大文学部国文科卒。詩集『地上がまんべんなく明るんで』で高見順賞、『箱入豹』で歴程賞受賞、『嵐の前』で鮎川信夫賞、『七月のひと房』で現代詩花椿賞をそれぞれ受賞している。評伝に『永瀬清子』、エッセイ集に『詩の目 詩の耳』、『詩はあなたの隣にいる』がある。東京都豊島区在住。


