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アートで世界の緊張を問う
6日から「対立のエスカレーション」展

2026.03.07

アートで世界の緊張を問う
 6日から「対立のエスカレーション」展

 戦争や分断が深まる世界を、アートはどう映し出すのか。企画展「対立のエスカレーション」が3月29日まで、まえばしガレリア ギャラリー2で開かれている。海外作家と日本人作家の7組8人が参加し、対立が暴力へ転じる過程や、権力が生む不安を作品で可視化する。遠い戦地の出来事を、前橋のまちなかで自分の問題として考える場にする。
Photo/ Bradley McCallum & Jacqueline McCallum&Tarry『Island Returned,1968』

世界の亀裂を映す

 会場に並ぶのは、対立の「熱」が上がっていく瞬間を捉えた作品群だ。宗教、銃、基地、国家、帰属といった、社会の深層に刺さる題材が交差する。
 海外勢では、アンドレス・セラーノが銃を極端なクローズアップで捉え、暴力の象徴を官能的な「物」として突きつける。

 米大統領ブッシュの肖像に弾痕を打ち込み、戦争指導者への皮肉を可視化するアラン・ドクレルク。

 ブラッドリー・マッカラム&ジャクリーン・タリーは小笠原返還の報道写真を起点に、占有と返還の政治史を重ねる。

 ヴィック・ムニーズは多様な素材で国旗像を組み立て、繁栄と喪失の両義性を浮かび上がらせる。

▲Vik Muniz『Two FLAG』

前橋から時代を見る

 2人の日本人作家の作品も出展する。山田周平はニヒリスティックな思考とユーモアで社会の矛盾を照らす。『アイ・アム・アン・アメリカン』では、日本人である作者が「私はアメリカ人だ」というテキストを提示し、国籍や帰属、アメリカという国家の象徴性を鋭く問う。第二次大戦中の日系人が忠誠を示すために掲げたスローガンを想起させ、排外主義への視線も重ねる。

 照屋勇賢は紙袋など身近な素材から繊細な形を切り出し、消費社会や環境問題、沖縄の歴史やアイデンティティを問い直してきた。出品作『空へ』は、赤い風船が天井に浮かぶ一方、紐の先に沖縄戦の不発弾の破片を結びつける。重い鉄の塊が浮力で宙を舞う光景が、現実の重さと希望の同居を象徴する。

▲照屋勇賢『空へ』

 遠い国の争いに見える出来事も、差別や監視、排除といった形で日常に影を落とす。前橋のギャラリーで世界の緊張を見つめ、私たちが何を許し、何を拒むのかを問い返す展示になっている。

対立のエスカレーション
会場/まえばしガレリア ギャラリー2(前橋市千代田町5-9-1)
会期/3月6日~3月29日
休廊/月・火・祝
営業時間/11時~19時
入場無料