watch
見たい
【特集 前橋×2025▶5】
本の街、前橋
書店とイベントが輪を広げる
2025.12.31
前橋の中心市街地に今年、二つの本屋が生まれた。中央通りに7月、「水紋」が開店。立川町通りには11月、「HENGENI BOOKS(ヘンゲニブックス)」が誕生した。さらに、絵本専門店「本の家2」は来年1月10日、中央通りへ移転する。明治初期創業の煥乎堂を含め、中央通りから立川町通りにかけて本屋が集まる街の風景が形づくられつつある。まえばしブックフェスや、まちなか絵本パラダイスといったイベントも重なり、前橋はまさに「本の街」として歩みを進めている。
(取材/阿部奈穂子)
店主の顔が見える本屋
中央通りに7月6日開店した「水紋」は、喫茶店を併設する書店だ。
本好きの店主が目利きした新刊と古本を並べ、「深く考える」本を軸に棚をつくる。委託販売はごく少量に抑え、買い取り販売を中心とする。売れ残れば在庫となるリスクは高いが、そのぶん選書に責任を持ち、店主の言葉で本を手渡す姿勢を貫く。
店内では、本に合わせた特注ブレンドのコーヒーを一杯ずつ淹れる。
▲水紋の店主、小澤亮太さん
11月29日には、立川町通りと裏弁天通りの角に「HENGENI BOOKS」が誕生した。書店に小中学生向けの学習支援塾、アクセサリー工房を組み合わせた複合施設で、若い夫婦が営む。
書店は「教科書の一歩先」にある本から、大人が読み込める一冊まで幅広くそろえ、読書会や哲学対話といった企画も定期的に開いていく。
2階の学び場は通い放題制を採用し、週末は自習室として開放する。勉強に疲れたら寝転んだり、置かれた本を読んでくつろげる「寺子屋」のような空間を目指す。
▲HENGENI BOOKS店主の金山慎太郎さんと杏菜さんご夫妻
本のイベントも一層盛んに
来年1月10日、絵本専門店「本の家2」は中央通りへ移転し再出発を切る。新たな店舗はアーケードがあるため、ベビーカーの親子も雨にぬれず来店できる。
絵本と児童書を約4500冊そろえ、一角には印刷製本コーナーを新設する。名刺や飲食店メニューなど小ロットの印刷から自費出版まで手掛け、古い本の修理も行う。
街なかの商いと表現を支える機能を担う。
▲中央通りで開店準備を進める本の家2
本の家2の移転で、中央通りには明治初期創業の煥乎堂、水紋、本の家2の三店がそろう。そこから北へ歩けばHENGENI BOOKSがある。性格の異なる本屋が、歩ける距離の中に点在し、本好きのための導線ができた。
「本屋がある街」ではなく、「本屋が連なって見える街」へ。2025年、前橋の中心部はそんな輪郭を持ちはじめた。
▲移転作業中の本の家2。右からオーナー・石川靖さん、店長・石川知恵子さん、スタッフ・梅山美砂さん
この流れを支えているのが、商店街を舞台にした本のイベントだ。糸井重里さんが発案した「まえばしブックフェス」は2022年、24年に開かれ、本と人が向き合う場を街なかにつくった。
今年は第2回「まちなか絵本パラダイス」も開催され、絵本をテーマに子どもから大人まで「心に残る一冊」と出会える場を目指した。絵本作家の谷口智則さんがライブペインティングを披露し、やまねこ座による人形劇、絵本と童話のビブリオバトル、読み聞かせや腹話術ショーなどのステージが続いた。ワークショップも多彩で、絵本を「読む」だけでなく「体験する」場が街に広がった。
▲10月に開かれた「まちなか絵本パラダイス」。ゲストは絵本作家の谷口智則さん
本屋が生まれ、イベントが重なる。点だった取り組みが線になり、前橋の中心市街地に「本の街」の風景が立ち上がっている。


