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平和の思い 国民的な共感に
「鈴木貫太郎」を大河ドラマに

2025.10.15

平和の思い 国民的な共感に
「鈴木貫太郎」を大河ドラマに

 太平洋戦争を終戦に導き日本に平和をもたらせた前橋市ゆかりの首相に焦点を当てるため、「大河ドラマ『鈴木貫太郎』を実現する会」が10月15日発足、前橋市で発会式と記念講演を開いた。出身地である大阪府堺市や晩年を過ごした千葉県野田市、栃木県足利市から関係者が集まり、全国的な運動に盛り上げてドラマ化を目指すことを誓った。

実現する会が前橋で発会式

 実現する会の発案者であり事務局長を務める前橋鈴木貫太郎顕彰会会長、腰高博さんが冒頭、発会を宣言した。

 戦後80年が過ぎ戦争が忘れさられつつある中、「国民的な放送番組であるNHKの大河ドラマに鈴木貫太郎翁を取り上げてもらうことを実現し、家族で茶の間から日本の近代史の歩みを振り返る機会を実現することは市民レベルで平和を考える意義のあることと思います」と決意を語った。

▲発会を宣言する腰高さん

▲会長に就任した前橋市出身の三村さん

 実現する会の会長に就任した日本商工会議所名誉会頭、三村明夫さんはドラマのテーマ設定が重要になるとして、「戦争を始めることは易しいが、終わらすことは非常に難しい。世界大戦の意味合いを整理する必要がある」と指摘した。

 発会式には孫の鈴木道子さんら親族や関係自治体から来賓が出席、発会を祝った。

▲元気な姿を見せた鈴木道子さん

 最後に、鈴木の言葉「正直に 腹を経てずに 撓(たゆ)まず励め」をもとに母校の前橋桃井小でいまも歌われている教訓歌『正直に』を歌手、松原広美さんのリードで来場者全員で熱唱した。

▲『正直に』をリードする松原さん

天皇の聖断引き出した鈴木

 記念講演はノンフィクション作家、保阪正康さんが「救国の宰相・鈴木貫太郎」と題して行った。

 保阪さんは二・二六事件で襲われ、とどめを刺されそうになった鈴木を妻、たかさんが必死にかばった逸話や米国のルーズベルト大統領が死去した際に「偉大な指導者であった」との電報を送った武士魂を紹介、「ドラマの要素になる」と提案した。

 昭和天皇との関係については、長く侍従長を務め、こわれて首相に就任した経緯から、話さずとも目で会話できる「黙契」にあったと解説した。

 ポツダム宣言受託を巡っては、昭和天皇に御前会議を招集させ「聖断」を仰ぐ形で終戦を実現させたとして、「昭和天皇に最も心を寄せて忠誠を誓った。本当の忠君の者。国民的ドラマにこれほど最大のテーマはない」とドラマ化に太鼓判を押した。

▲昭和天皇との関係を深く解説する保阪さん

鈴木貫太郎(すずき・かんたろう)

 

 1868年、和泉国伏尾(現大阪府堺市)に関宿藩(千葉県野田市関宿町)の藩士の子として生まれる。千葉県から前橋に移り、厩橋学校(現前橋市立桃井小学校)、群馬県中学校(現群馬県立前橋高等学校)で学んだ。海軍兵学校に進み、日清、日露戦争に従軍。連合艦隊司令長官などを歴任後、侍従長として昭和天皇に仕えた。1936年の二・二六事件で銃撃されたが一命を取り留める。1945年4月、首相に就任、同年8月、ポツダム宣言を受諾した。1948年、関宿町の自宅で死去する。享年81。