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前橋に『ゴースト』現れる 
アーツ前橋で20日から

2025.09.11

前橋に『ゴースト』現れる 
アーツ前橋で20日から

 目に見えるものと見えないもの、その境界に潜む“ゴースト”をテーマにした展覧会がアーツ前橋で9月20日から始まる。絵画や彫刻、写真、映像など約100点が集結。歴史や土地の記憶、最新技術で生まれる幻想、そして前橋に眠る声が作品としてよみがえる。サムネ写真はトニー・アウスラーの「OpenObscura」。

多彩な表現が問いかける存在

▲山内祥太《Being... Us?》2025年

 「ゴースト 見えないものが見えるとき」には、国内外20組の作家が参加する。絵画もあれば、映像もある。AIやVRで仮想と現実を行き来する作品もあれば、紙の上に細密な線を刻む作品もある。

 山内祥太はVRや映像を駆使し、現実と仮想の境界に立ち会わせる。

 トニー・アウスラーは観客を飲み込むような映像空間をつくり、新平誠洙は光の反射や透過を題材に、重なり合うイメージで時間の層を描く。漫画家の諸星大二郎の世界も加わる。ばらばらに見える表現が、一つのテーマ「見えないもの」を軸に集まっている。ふだんの生活では気に留めない「存在」を、観客は思い出すことになる。

▲新平誠洙《Phantom Paint #3》 2025年 Courtesy of ARTCOURT Gallery Photo : Takeru Koroda

▲諸星大二郎「不安の立像」より 1973年 ©諸星大二郎

記憶と土地に潜むゴースト

 過去は過ぎ去った、というのは本当だろうか。

 丸木位里・俊の《原爆の図》を前にすると、戦争はまだ終わっていないと思わされる。ボルタンスキーは古着や写真に人の痕跡を刻み込み、サルキシアンは紛争の爪痕を静かに写し取る。

 横尾忠則や諏訪敦、岩根愛らは土地の儀礼や風景に潜む気配を呼び起こす。作品の前に立つと、過去と現在を行き来するような感覚がある。

 ゴーストは歴史や土地のなかにとどまり、忘れたふりをしても姿を現す。

▲岩根愛《Shosuke Nihei, Kailua Camp—Maui, Hawaii》〈 KIPUKA〉シリーズより 2016 年 ©Ai Iwane, courtesy KANA KAWANISHI GALLERY

前橋を舞台にした新作も

 この展覧会には、街そのものが作品になる仕掛けもある。

 尾花賢一+石倉敏明は赤城山の水の物語を調べ、新作として展示する。マームとジプシーは広瀬川周辺で聞き取った市民の声を重ね、空襲や女工の記憶を舞台化する。

 daisydozeは萩原朔太郎を題材にした体験型の演劇を仕掛け、観客はヘッドフォンの音声に導かれて前橋の市街地を歩く。

 美術館の外に出ると、街の風景そのものが作品に見えてくる。過去と未来、可視と不可視が重なり合い、前橋の街が大きな舞台に変わる。

▲尾花賢一《赤城山リミナリティ》2019年 撮影:木暮伸也

 「ゴーストは過去や幻想ではなく、いまも確かに存在するもの。戦争や分断、環境破壊といった現代の不安のなかで、見えないものや取り残されたものに光を当てる場にしたい」とアーツ前橋特別顧問で、同展ディレクター の南條史生さんは観覧を呼び掛ける。

▲南條さん

ゴースト 見えないものが見えるとき
会期 2025年9月20日~12月21日
会場 アーツ前橋 
開館時間 10時~18時(入場は17時30分まで)
休館日 水曜
観覧料 一般1,000円、学生・65歳以上・団体800円、高校生以下無料
※1階ギャラリーは観覧無料。障害者手帳所持者と介助者1名無料
※10月28日、11月3日、10月11日・12月13日は入場無料

前橋に『ゴースト』現れる アーツ前橋で20日から

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