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【聞きたい 大森昭生学長▶1】
「学長が選ぶ学長」4年連続1位

2025.05.17

【聞きたい 大森昭生学長▶1】
「学長が選ぶ学長」4年連続1位

 共愛学園前橋国際大の大森昭生学長が全国の大学学長が選ぶ「注目する学長」で4年連続1位となった。全国796大学を対象にしたAERAムック「大学ランキング2026」(朝日新聞出版)の調査。旧帝大や早慶をはじめとする有名私立大ではなく、なぜ、地方の私立大の学長が支持されたのか。大森学長にインタビューした。

瀬戸際の地方大学

――全国の大学学長からの評価が4年連続で1位となりました。

 もともと本学は「教育面で注目」でずっと上位にランキングされていました。大学自体が高く評価され、「そこの学長は誰なんだろう」ということで私が選ばれたのだと解釈しています。得票も伸びており、とてもうれしく思います。

 学長が選ぶ、という、いわば大学運営のプロに評価していただいたことも率直に喜んでいます。

――支持された理由は何でしょう。

 大学を取り巻く環境はここ数年、急激に厳しくなっています。都市部でも学生募集を停止した名門校がありましたね。

 大学の数は地方の方が圧倒的に多いのですが、少子化のため都市部以上に厳しく、瀬戸際に立たされている状況です。

 こうした中にあって、本学は学生の9割が地元出身で、7、8割が地元に就職しています。地方創生の拠点だと認識しています。

 文科省の会議でうちの学生が「前橋国際大がなかったら大学進学をあきらめたかもしれない」とスピーチしました。優秀な学生であっても、経済面から東京の大学に行けない子が少なからずいるというのが実体なのです。すなわち、地方に大学がなくなったら、高等教育を受けられなくなる子供が増えてしまうという地域課題としての危機感もあります。

 そんな中、多くの地方大学の学長さんが、本学の独自の教育カリキュラムや運営について、「いいところを採り入れよう」とウォッチしてくれているのだと思います。

▲4年連続で「注目する学長」に選ばれた大森学長

――大森学長は文科省の中央教育審議会の委員を務め、地方大学の立場から提言されてきました。

 国への答申をまとめる部会の副部長となり、答申後は答申を具体化する2つの委員会にも所属しています。地域大学の振興に関する有識者会議では座長を務め、政策を取りまとめています。学長は中央で開催されるさまざまな会議も注目していますので、期待していただいているのだなと責任を痛感します。

高等教育への公的資金は

――高等教育の無償化が議論されています。

 賛否両論ありますが、私は専門学校を含めた高等教育の無償化、減額化は必要だと主張しています。

 理由は大きく2つあります。まず、大学は地域のインフラだと考えています。その地域で必要な人材、介護福祉士であったり、教員や保育士といった必要不可欠な人材をはじめ、地域経済を牽引する産業人材を育成しています。本学も各方面に人材を供給しています。水道がなかったら生活できませんよね。それと同じです。高等教育に公的資金が投入されてもおかしいとは思えません。

 高校の無償化が導入されましたが、ほとんどみんなが高校に進学しているためですね。大学もかつてのように特別な人が行く存在でなく、過半数が進学しています。高校に近い状況になっています。

――2つめの理由は?

 少子化と密に絡んでいます。私学の授業料は年間100万円を超えています。仮に150万円とすると、2人が同時に通えば年間300万円。なかなか支払える家庭は少ないですね。これは国公立大学と異なり、私立大学へは公的な援助がほとんどないからです。

 自分は大学に行ったのに子供を行かせないわけにはいかない。だから、産み控えが起こるのです。

 高等教育への公的資金導入は少子化対策の大きなインパクトになるとみています。

――大学の生き残りのために使うべきでないとの反対論もあります。

 大学を運営している学校法人は非営利組織です。民間企業さんとは成り立ちが異なります。むしろ、地方の人口が少ないところで学生が集まりづらくても、地域に必要な人材を育成しようと頑張っている大学を社会全体で応援すべきではないでしょうか。本当に自分の地域の大学がなくなってもよいのでしょうか?

 それに、日本の大学生の8割は私立大学生です。ところが、補助金は各大学の年間予算の9%くらい。残りは学費で賄われています。

 日本の8割の学生はほぼ自腹で学んで、そして優良な納税者になるわけですから、国は少ない投資で大きなリターンを得ることになっています。

 その結果、どうなっているか。大学進学率でも日本は世界から大きく取り残されているのです。

 韓国の大学進学率は7割を超えています。韓国も台湾も国ぐるみで留学生を取り込もうとしています。家族ぐるみで迎えるシステムもあるようです。少子化の中、労働力確保まで考慮しています。

 一方で日本はどうか。地方の大学がなくなってしまえば、大学進学率は落ちていく。それは長い目でみれば国力の低下につながるのです。

大森昭生(おおもり・あきお)

 1968年、仙台市生まれ。東北学院大文学部、大学院博士課程。96年、学校法人共愛学園に入り、2016年から共愛学園前橋国際大学長。文部科学省中央教育審議会の各種委員、群馬県青少年健全育成審議会長、前橋市スーパーシティ・アーキテクトを務める。3児の父親で、育児休業を取得した経験がある。群馬県総合表彰(男女共同参画分野)。

AERAムック「大学ランキング2026」

 「大学を、いろんな角度から見てみよう」をコンセプトとした大学総合評価誌。特集「激変する社会 大学は変われるか」では関西国際大学の濱名篤学長と共愛学園前橋国際大学の大森昭生学長の対談、法政大学のダイアナ・コー総長のインタビューを掲載している。2530円(消費税込み)。

 共愛学園前橋国際大は「教育面で注目」で6位、「総合的に注目」で10位に入っている。