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まえばし☆みんなのえいがさい インクルーシブシネマフェス2024年
日沼支配人のおすすめ作品VOL.1

2024.12.02

まえばし☆みんなのえいがさい インクルーシブシネマフェス2024年
日沼支配人のおすすめ作品VOL.1

 前橋シネマハウスは12月7日から「まえばし☆みんなのえいがさい インクルーシブシネマフェス2024年」を開く。インクルーシブとは「すべてを包括する、包みこむ」こと。 障がいの有無や性別、性的嗜好、人種など、人は様々な違いがある。 「違いを認め合い、すべての人がお互いの人権と尊厳を尊重し合いながら生きていく。そんな社会になって欲しい。気づかないけれどいろいろな人が周りにいることを知ること、理解することが大事ではないか」と前橋シネマハウス支配人の日沼大樹さん。日沼さんおすすめの作品を2回にわたって紹介する。

誰でも楽しめる15作品を上映

 2021年に上映した1本の映画でとてもショックを受けた。その作品は2011年3月11日に発生した東日本大震災の時にろう者の人たちがどのような状況に置かれたのかを、同じろう者の監督が取材したドキュメンタリー映画だった。

 自分自身それまで多くの障がいに関しての映画を上映してきたし、障がいや性、社会問題に対して周囲より理解し、考えているものだと勝手に思っていた。ただ震災から10年経ったその時まで、あの震災の映像を観て、そこに様々な理由により一人で逃げることができない、逃げないといけないことに気づくことができない人たちがいたことをまったく意識していなかった。自分は何と勝手な考えで理解していたと思い込んでいたのだろうと思い知った。

 同時に自分たちの周りに気づかないが、いろいろな障がいを持っている人。社会に生きづらさを感じている人たちがいることを知って欲しい。意識してほしいと思うようになった。そんな思いを持っているときにこの“みんなのえいがさい”の企画が持ち上がってきた。地元の前橋市で誰でもみんなで映画を楽しめる映画祭、いろいろな人がいることを知ってもらえる映画祭、命、生きるということの大切さを感じてもらえる映画祭、そんな映画祭になって欲しいと実行委員会の皆様で選び抜いた15作品を上映します。

 

『コーダ あいのうた』 (C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

ろう者やコーダを身近に 『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

 絶対に見て欲しい作品をご紹介したい。

 まずは現在大ヒットロングラン上映中の『ぼくが生きてる、ふたつの世界』。本作は、今回の映画祭のオープニング作品で12月7日(土)の上映前には群馬県出身のろう者の俳優である今井彰人さんと小川晶市長のトークイベントも予定されている。

 舞台となるのは宮城県の海沿いの小さな港町。そこでろう者の両親から生まれた原作者の五十嵐大さんがコーダ(聞こえない親をもつ聞こえる子供のこと)としての家族との絆、葛藤が描かれている。本作の素晴らしいところは、すべての人に共感するのではないかという呉美保監督らしい感情の表現とそれを中学生~青年まで演じ切る俳優、吉沢亮であると思う。

 ろう者やコーダを身近な存在として認識するなかで、誰でも感じた心の動きを美しく描き出す。ろう者の俳優である今井彰人さん、忍足亜希子さんにも注目です!

『ぼくが生きてる、ふたつの世界』 (C)五十嵐大/幻冬舎 (C)2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

アフガニスタンに捧げた日本人医師のドキュメンタリー

 2本目は2022年の全作品でNo.1と言いたい作品『劇場版 荒野に希望の灯をともす』。2019年12月に遠く離れたアフガニスタンで亡くなった医師、中村哲さんを20年以上にわたり追い続けたドキュメンタリー映画です。中村さんと20年以上アフガニスタンで一緒に苦楽を共にした谷津監督の舞台挨拶も15日(日)に予定しているのでぜひお越しいただければと思います。本作は口コミで全国に広がり、いまも各地の市町村で上映会が行われています。

 先日行われた群馬県の上映会で上映主催者の若い女性の方が上映前の挨拶で「この映画を観ないと後悔すると知り合いに言われて鑑賞しました。感動し、この映画を知らない、中村さんを知らない人たちに絶対に観て欲しいと自分たちで上映会を決めました」と話していました。それくらい観た人たちの心に残る、話したくなるドキュメンタリーです。

 “アフガニスタン”をネットで検索すると外務省のページが出てくる、それを開くと全土が赤く表示され危険度がMAXだとすぐにわかる。中村さんは20年以上前にそんな場所に日本の平和医療団として派遣された。そこで彼が見たのはハンセン病、戦争、貧困で苦しむ多くの人たちだった。医者としての使命を尽くそうとした彼だったが、医者としてではなく、人として土地をそしてそこに住む人々を救うために立ち上がる。

 一面の砂漠と山が広がるアフガニスタンの大地に不釣り合いな緑の森と大地、用水路が何十キロと続いている。そこで暮らす人々には笑顔が溢れ町にはいたるところに中村さんの像や壁画が描かれている。彼らにとって中村哲という人間がいかに特別かわかるだろう。この利己的な日本社会に住む我々にたくさんの言葉と想いを届けてくれる映画になると思います。

 

『荒野に希望の灯をともす』 (C)日本電波ニュース社

まえばし☆みんなのえいがさい インクルーシブシネマフェス2024年

日程:12月7日(土)~12月20日(金)※火曜休館

作品:『僕が跳びはねる理由』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『コーダ あいのうた』

 『咲む』『みんなの学校』『うたうかなた』『ぼくとパパ、約束の週末』

『ウルフウォーカー』『ワンダー 君は太陽』『劇場版 荒野に希望の灯をともす』

『いのちの停車場』『桜色の風が咲く』『それいけ!アンパンマン ばいきんまんと

えほんのルルン』『梅切らぬバカ』『雄獅少年/ライオン少年』

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