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萩原朔美、詩人になる
詩誌に寄稿、来春には初の詩集
2024.11.25
前橋文学館特別館長の萩原朔美さんが“禁断”の詩を発表した。「朔太郎の孫」と呼ばれることを嫌がり、抗うように「詩は書かない」と公言していたが、9月に発行された詩誌『指先の月』に詩を投稿している。詩作をさらに重ね、来春には初の詩集を出版する。
前橋の風土が詩を書かせた
『指先の月』には自信作という『見巧者(みこうしゃ)』や『廃橋』など5編が掲載されている。
テーマはすべて「声」。自身のルーツや耳鳴り、老いていく体から発せられる声、役者の芝居の台詞を詩に表現している。
萩原朔美さんはかねて「『朔太郎の孫』と言われるほど嫌なことはない。祖父や母からの影響があるとすれば、詩を書かない、小説を書かないと決めたこと」と話し、詩を書くことはなかった。
心境の変化について、「70歳過ぎたら人間じゃない。『老人』という名の人種。何だってできる。詩人にだってなれる、禁断のね」と笑いで煙に巻きながら、「前橋という風土が書かせた」と本音を語った。
前橋文学館の館長に8年前に就任、萩原朔太郎賞の選考委員を務め朔太郎の詩にもふれるようになった。交流の深い詩人で前橋を拠点に活動する「芽部」の代表、新井隆人さんが十数年ぶりに詩誌を出すことになり協力を求められ、「前橋の詩人に頼まれ、ふと試みた。半分、前橋に住んだからできたこと。文学館に来なければ詩は読まない、書かない人生だった」とうれしそうに経緯を説明する。
「作風は朔太郎に似ていますか」との問いには「100%ない」と大笑い。「ただ、朔太郎賞の選考で候補作を読んでいるから現代詩に触発されている」と間接的に影響を受けていることを認めた。
「谷川俊太郎さんのように簡単な言葉で優しい詩を書けたらいいね」と理想を語り、第1回朔太郎賞受賞者で先日亡くなった偉大な詩人を讃えた。
自身の詩集は来春にも発刊の予定。同時期に「みやま文庫」から前橋文学館の活動に関する著書を出すことになっており、「自分の人生の記念誌として、散文と韻文の本ができる」と楽しみにしている。
「詩を書かない」と答えたインタビュー記事はこちらから。
『指先の月』
SNSや朗読イベントで詩を発表していた「芽部」の新井隆人さんが企画・編集、新井さんを含む8人が26編を投稿している。新井さんと元ヤマサキ深ふゆさんによる連詩もある。
300部製作、イベントや展覧会で販売し150部ほど残りがある。通販サイト「BOOTH」で600円(送料別)で販売している。