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三島由紀夫の「美」と「死」
声でつむぐリーディングシアター 「葵上」「弱法師」
2024.11.07
三島由紀夫の「葵上」「弱法師」が11 月24日、前橋文学館リーディングシアターで上演される。両作は三島が能の謡曲を近代劇に翻案した『近代能楽集』に収められ、国内外で度々上演されている人気の舞台作品。県内の役者のほか、国内外で活躍する中林舞、大竹直が出演する。演出は、1988年に「葵上」、1990年に「弱法師」を手がけた萩原朔美特別館長。30 年ぶりに三島作品に挑む萩原さんが、リーディングシアターならではの魅力について語ってくれた。(取材/中村ひろみリポーター)
萩原朔美さんが演出
三島由紀夫は戯曲を「文学」として捉え、台詞に強いこだわりを持っていた。萩原さんは今回、その意図を汲み、言葉の力を最大限に生かすリーディングシアター形式を選択。視覚的な演出を最小限に抑え、ラジオドラマのように台詞で物語を伝えることで、三島作品の文学性と美しさを際立たせる。
「三島さんは戯曲を劇的に表現されるのは嫌だったんじゃないかな。むしろリーディングシアターのほうが褒めてもらえると思ってます」と上演の意義を語る。
「葵上」と「弱法師」に見る生と死の対立
「葵上」では生霊が、現実を超越した存在として描かれ、執念深く生者に影響を与える。ここには、「生」にリアリティを感じられなかった三島の独特な感覚が投影されている。
また「弱法師」では、視覚を失った主人公が、終焉を迎えた世界に生きながらも、現実との関係に苦しむ様子が描かれる。これは第二次世界大戦を生き残ってしまった三島自身の、複雑な思いが反映されている。
一方、役者については、声とともに、その身体性を重視。舞台の上で独特なたたずまいを見せてくれるであろう、振付家でもある中林舞、海外公演を含む豊富な舞台経験に加え、映像作品でも活躍の大竹直と、東京で活躍する二人の俳優を、群馬県内でもベテラン勢の役者が迎える。
不思議な作品を不思議なまま楽しむ
今回のリーディングシアターは、前橋文学館での「月刊『新潮』創刊120周年記念展」の一環として開催され、三島作品の持つ普遍的なテーマを多くの人に伝えることを目的としている。
萩原さんは「観終わったあと、なんか変なこと言ってたなあとか、不思議な言葉が印象的だったなあと思うでしょう。それでいいんです。それこそ、三島さんは喜んでくれると思います」とみどころを語った。
特別企画展 「現在(いま)を編集する―月刊「新潮」創刊120周年記念展」 関連イベント
前橋文学館リーディングシアターvol.24
三島由紀夫作『近代能楽集』より 「葵上」「弱法師」
日時:2024年11月24日(日) 13:30開演 13:00開場
会場:前橋文学館3階ホール
観覧料:1演目券500円(当日展示観覧券付)
2演目券1000円(当日&~1/26展示観覧券付)
定員:100人
主催:前橋文学館
問合せ先
前橋文学館
- お問合せはこちら
- 027-235-8011
住所 | 前橋市千代田町三丁目12-10 |
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