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蜷川実花さんの前橋へのオマージュ
9月3日まで「まえばしガレリア」で「残照/Eternity in a Moment」

2023.07.15

蜷川実花さんの前橋へのオマージュ
9月3日まで「まえばしガレリア」で「残照/Eternity in a Moment」

製糸業で栄え、停滞し、また「めぶく。」前橋をイメージして…。アーティスト、蜷川実花さんの展覧会「残照/Eternity in a Moment」がまえばしガレリアギャラリー2「小山登美夫ギャラリー 前橋」で7月15日から9月3日まで開かれている。初公開となる最新の立体作品「残照 /Eternity in a Moment」を中心に、コラージュ作品やネオン管を用いた写真作品などを展示する。(取材/阿部奈穂子)

前橋の新たな再生を描く

高さ8㍍。吹き抜けの天井に届きそうなカラフルな花々の立体作品「残照/Eternity in a Moment」。バラやツツジなど前橋にちなんだ花もある。

「3日間かけて設置しました。当初の計画より、サイズはどんどん大きくなりました。このギャラリーに合わせて、育てあげていったという感じです」と蜷川さん。

▲吹き抜け空間を彩る立体作品

窓側から見ると、生き生きとした美しい花々だが、反対の側は枯れて色が変わっている。

作品には、展示場所となる「まえばしガレリア」の特色や、前橋という土地自体へのオマージュが込められている。

「まえばしガレリア」が建つ数10年前、この土地は地域の人々の文化と暮らしの交流拠点だった。昔、製糸業で栄えた前橋は、いっときは衰退したが、時を経て再び「アートと食」という新たな価値を生み出し始めている。そういった生命のサイクル、新たな再生、繁栄と衰退、明と暗、人生や世界の移ろいの無常感を作品にこめている。

「造花を使った作品なので、どうやって生命力を持たせるかが、一番難しいポイントでした」と話す。

 

▲裏から見ると、枯れた花や朽ちた枝

▲下には落ちた花や葉

前橋には仕事のほか、友人に誘われ、これまで何度も足を運んでいる。「他の街にはない面白さがあります。古い商店街の中に新しい店舗が混在し、歓楽街の中にガレリアのような素敵なギャラリーがある。たくさんの顔が層として折り重なっていて、写真家としても興味深い」と話す。

展示はほかにコラージュ作品やネオン管を用いた写真作品など10数点。蜷川さんの世界に没入できる。

▲光と花の美しい世界が繰り広げられる

▲宝石のような光り輝くコラージュ作品

宮田裕章氏が解説

「残照/Eternity in a Moment」は蜷川さんが、宮田裕章氏(慶應義塾大学教授、プロデューサー)、Enzo氏(セットデザイナー)らと組むクリエイティブチームEiMで、共同制作した。宮田氏は下記のように作品を解説する。

残照 /Eternity in a Moment
<生命のサイクル>
本作品は、いのちが生まれ散っていく生命のサイクルを、様々な時間軸の中で表現した空間展示です。一方の面では、色鮮やかに咲き誇る様々な花々がいのちの力と多様な豊かさを示しています。もう一方の面では、枯れた花々が落ち、種子が散りゆく様が表現され、生命の終わりと再生の始まりを描いています。この二面性は、美しさとは一瞬にして変わるものであり、しかし新たな再生への道を示すものであるという、生命の一部である死と再生を示しています。
<世界の移ろいと重なるコントラスト>
作品は生と死、繁栄と衰退、明と暗といったコントラストを、私たちの人生や世界の移ろいと重ねています。美しく咲き誇る花々も枯れた花との対比の中で無常感が滲みます。また枯れた花を観察するとただ悲しいだけでなく、次の命の種子を宿す希望が内包されていることも感じることもできるかもしれません。咲く花と枯れた花は美醜によって対比されるのではなく、そのどちらにも美しさがあります。鑑賞者は自身の経験や感情、未来に対する考えを反映させながら作品と向き合うことで、作品の中にある多様な美しさを感じることができるでしょう。
<サイトスペシフィック>
「残照」は、かつて栄え、その後停滞し、これから新しい未来を創ろうとしている前橋への敬意を示した作品でもあります。一面に咲き誇る花々(花の中には前橋ゆかりの植物も含まれています)はかつての栄光の時代を、枯れた花々は一時的な停滞を象徴し、種子の散布は新たな再生と前進を示唆しています。この作品は前橋の歴史、現状、そして未来への希望を視覚的に表現する一方で、さまざまな地域コミュニティに共通する都市のサイクルともつながるコンセプトとなっています。
<まえばしガレリアでの鑑賞体験>
本作品のデザインはまえばしガレリアでの展示を前提にして製作されています。作品は4面がガラスで天井高8mの空間に浮かぶように展示されます。最も人通りが多い通りからはギャラリーの中に色鮮やかな花が浮かんでいるように見えます。鮮やかさに目を奪われてギャラリー内に入って来た人々は、枯れた花が存在感を放つ、作品のもう一つの側面に対峙することになるでしょう。
慶應義塾大学教授
宮田裕章

▲「前橋はこれからいろいろなケミストリー(化学反応)が起こりそう」と蜷川さん

店舗情報

小山登美夫ギャラリー 前橋

住所 前橋市千代田町5-9-1 まえばしガレリア1階ギャラリー2
営業時間 11時~19時
定休日 月、火曜
まえばしガレリアギャラリー1では同期間中、高崎市在住の現代美術家、竹村京さんによる「ながれるひかりはやいいろ」展を開いている。