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赤城山地熱発電を断念
高温の蒸気や熱水確認できず

2025.07.29

赤城山地熱発電を断念
高温の蒸気や熱水確認できず

 東京電力ホールディングスは赤城山頂で進めていた地熱発電の事業化に向けた調査を中止、計画を断念した。試掘による地下探査の結果、熱源となる高温の蒸気や熱水が確認できなかったため。2018年に計画を発表、10年程度かけて実用化させる工程で、実現すれば群馬県内第1号だったが幻に終わった。

2023年から小沼周辺で試掘

 赤城山頂での地熱発電は東京電力リニューアブルパワー(東京都千代田区)が2018年1月に構想を示し地元関係者や群馬県、前橋市と協議を重ねてきた。あかぎやま地熱協議会を2022年10月に発足、地元の合意を得て調査に着手した。

 同社の説明によると、2023年6月から小沼近くにある血の池の駐車場付近に調査井を設け、複数回にわたって試掘してきたが、いずれも発電に必要となる蒸気や熱水は確認できなかった。

 

▲青印が試掘の工事現場

 このため、2025年度以降の試掘を断念。調査井はすべてセメントや砂利などで埋め、敷地は原状回復するための工事にあたっている。

 地熱協議会には2025年6月、事業を中止することを正式に報告している。

▲試掘の工事現場に近い小沼。今年は水位が低下している

「残念」「ほっとしている」

 地元では安定して稼働できる地熱発電に期待した人も多かった。「以前、県企業局の調査で164度の熱水が確認されたので、可能性は高いと思っていた。発電後の熱水利用もいろいろ考えられていただけにショックだ」とある関係者は残念がっている。

 これに対し、赤城南面にある赤城温泉郷の関係者は「当初は赤城温泉郷の近くで調査し、水道が出なくなるトラブルもあった。『地熱発電の温泉への影響はない』と事業者は説明していたが、不安だった。中止が決まり、みなほっとしているのが正直な気持ち」と受け止めている。

 群馬県内では以前、嬬恋村が地熱発電の計画を明らかにしたが、隣接する草津町の反対を受けて取りやめたことがあった。

安定した発電量、低い成功率

 地熱発電 地中から取り出した蒸気でタービンを回し電力を発生させる発電方式。再生可能エネルギーを活用するため、温室効果ガスの発生が少なく、太陽光や風力発電と異なり、天候や昼夜に関係なく安定した発電量が得られる利点がある。一方で、地下1000~2000㍍まで掘らなければならず、開発に多額のコストがかかり、事業化の成功率は3割程度とされている。