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ラッパを鳴らして豆腐を引き売り
橘豆腐店の橘末松さん

2022.06.13

ラッパを鳴らして豆腐を引き売り
橘豆腐店の橘末松さん

自転車で住宅街を走り回る

「プー、プゥー」。土曜日の昼下がり、前橋北部の住宅街に懐かしいラッパの音が響いた。「もしかしたら…」。サンダルを履き、慌てて家を出ると、予想が当たった。自転車に乗ったおじいさんが豆腐を引き売りしていた。

「ちょっと待ってくださいね」。家に戻り、財布を取り出し、ついでにカメラを持ってきた。

▲笑顔で応対してくれた橘さん

店主は南橘中学の近くで橘豆腐店を営む橘末松さん(77)。新潟県に生まれ、中学を卒業すると、東京都内の豆腐屋で奉公した。製糸業が盛んだった前橋市に、きょうだい6人中4人が暮らしていたため、現在地に店を構えたという。

2時半に起床、すべて手作り

まだ日が明けぬ午前2時半に起き、豆腐作りを始める。店は奥さんに任せ、午前6時から自転車に乗って引き売りに出かける。「自分で作った豆腐は自分で売る。スーパーとかには一切出していない」と職人の矜持をにじませる。

▲生揚げ、油揚げがぎっしり

▲豆腐は昔ながらの濃厚な味

豆腐は一丁160円。生揚げも同額。スーパーの特売品に比べれば高いが、「食べ比べてもらえればきっと違いが分かる」と笑顔で話す。両方お願いすると、油揚げ(65円)を2枚サービスしてくれた。

冷や奴と焼いた生揚げを夕飯のつまみにした。豆腐は絹ごしと木綿の間くらいの弾力。味が濃い。

「毎日の晩酌が楽しみ」という橘さんも一杯やっているだろうか。日曜日以外、前橋市北部の住宅街を自転車で回る活力源だ。

▲元気いっぱいに走り出す