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聞きたい

【聞きたい 藤巻亮太さん▶2】
ビールとプリンとマエバシ

2025.05.01

【聞きたい 藤巻亮太さん▶2】
ビールとプリンとマエバシ

 もっとも多感な時期を前橋で過ごし、プロデビューという人生の転機を前橋で迎えた藤巻さん。当時を振り返り、思い出を語ってもらいました。またミュージシャンを目指す若者へのメッセージも。
(取材/阿部奈穂子、撮影/志賀俊祐))

心細さ3人で励まし合って

――かつて前橋にはライブハウスがたくさんありました。前橋工科大時代、出演されたことは?

 大学3年のとき、初めてレミオロメンでライブしたのが、当時、前橋にあった「club FLEEZ」(クラブフリーズ)でした。

 前座で出させていただいて、3曲だけやったのかな。お客様はメインのバンド目当ての方ばかりで、レミオロメンは学校の友達が見に来てくれたぐらい(笑)。

――いまでは信じられませんね。どんなタイミングでプロになろうと思ったんですか。

 やっぱり曲作りに目覚めたことが大きかったと思います。そして、地元の同級生で、東京でプロのミュージシャンをやっていた(前田)啓介に、音楽がどんどん好きになっている自分の気持ちを伝えたら、一緒にバンドを組んでやってみないかという話になり、高校時代に一緒にドラムを叩いていた(神宮司)治を誘ってレミオロメンを結成しました。

 3人とも20歳のときです。そして上を目指そうぜということで…。

――就職はまったく視野に入れず?

 はい。就職活動は一切しませんでした。 3年生のときにレミオロメンを組んで、大学を卒業するまでに、そんなすぐに結果が出るはずはないんですけれどもね。

 周りのみんなはどんどん就職が決まっていって、この先のことや卒業旅行をどうするとかいう話をするんですけど、だんだんそういう輪から出ていき、心細さを抱えながら、「僕たちがやってることは絶対にイケてるはずだ」「かっこいいから頑張ろうぜ」って、メンバー3人で励まし合いながら過ごした 時間は忘れられません。

――「粉雪」は山中湖が舞台で生まれたと聞きました。前橋をイメージして作った曲ってあるんですか。

 レミオロメンで最初の頃、「ビールとプリン」という曲がありました。学生で、これから卒業してしまうんだけど、この先どうなるんだろうっていう不安。もうまさにそのときの景色は前橋の景色ですね。

▲「ビールとプリン」が収録されたアルバム「レミオベスト」

美しい、かっこいい、自分の感覚を信じて

――前橋の人の人間性はどうでしたか。

 親切で面倒見のいい人が多かったです。バイト先でもよくしてくれました。ホテルの宴会場で、ウェイターのアルバイトをしていたんですが、学生は日払いでバイト代をもらえたのは嬉しかったですね。そこで頑張ってお金を貯めてギターを買おうとしたんですけれど、日払いのバイトってついつい使っちゃうんで、全然貯まらなくて。

 でも、それでも頑張って貯めて、「ダストボウル」という楽器店で、ムスタングというギターを買いました。

――初めてのギターですか?

 2本目です。大学生になってからは初めてのギターでしたね。

――赤城山に遊びに行くこともありましたか。

 2019年に、ペルセウス座流星群が来た時ですね。赤城山に見に行って…。流星痕というのがあって、流星が流れてくるんですけど、消えないんですよ、残像が夜空に。すさまじく感動した思い出があります。

――それは歌になっていないのでしょうか。

 残念ながら(笑)。でも18歳、19歳の頃って宇宙とかすごく好きでした。 自分がどこから来たのか、宇宙に果てはあるのか、そんな考えてもしょうがないようなことを結構考えたりするのが好きで。流星群を見ながら、自分の1個しかない命とか、1回しかない人生とかに思いをはせていました。

 あまりに壮大な宇宙の中で、こんなちっぽけな自分がいるんだけど、確かに生きているみたいな。

――毎年、山梨でやられている野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI」のように、赤城山でも「Mt.AKAGIMAKI」をやっていただけるとうれしいです。

 赤城も巻くんですね(笑)。そんな嬉しい話をありがとうございます。 僕が4年間住んだ前橋は、本当に第2の故郷と言ってもいい場所です。しかも多感で、人生で一番悩んだ4年間を前橋で過ごせたので、そこで醸成された僕の音楽もレミオロメンの音楽もあります。いつか前橋に恩返しをしたいという思いはずっと持ち続けています。

――もしも、ミュージシャンにならなければ何になってたと思いますか?

 学生時代は、ある種の造形みたいなものに興味がありました。何かを作って、そこに人の暮らしがある。 そんな想像を膨らませられる仕事には憧れはあります。 

  あるいはこの年になると農業もいいなって思います。 実家は山梨で桃とブドウを作っているんですけど、僕の原点は農業をやっている父母の背中。それを見て育ったので、何かを生み出す、作り出す道を選んだのだと思います。

――最後にミュージシャンを目指す前橋の若者たちにアドバイスをいただければ。

 世の中に正解なんてないと思います。自分の中で、これ美しいなとか、これってかっこいいなとか、そういうものがすごく大事な気がします。周りを見渡し、第一線で活躍している方はそうやって自分の感覚を信じて活動していらっしゃる方ばかり。

 僕らにしても、最終的に誰かと比べるのではなくて、自分がいいと思っているものを信じて進んできたので、その感覚を大事にしてほしいなって思います。 

ニューアルバム「儚く脆いもの」

2年ぶりのオリジナルアルバムを3月26日リリース。収録曲は「桜の花が咲く頃」「朝焼けの向こう」「Glory Days」「愛の風」「 真っ白な街」「 以心伝心」「 儚く脆いもの」「 新しい季節」「 メテオ」「 ハマユウ」の全10曲。初回限定盤(CD+DVD)のDVDには「オオカミ青年」「ビールとプリン」「3月9日」など7曲収録。

ふじまき・りょうた

1980年生まれ。山梨県笛吹市出身。前橋工科大学卒。2000年、レミオロメンを結成し、2003年、メジャーデビュー。2012年2月、ソロ活動を開始。2018年から山梨・山中湖交流プラザきららで野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI(マウントフジマキ)」を主催。3月26日、5thアルバム「儚く脆いもの」をリリース。

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