【聞きたい ネコニスズ 舘野さん父、忠次郎さん】
たー君へ　人生わがままであれ

――YouTube番組「生き活き習慣」を立ち上げ、息子さんと漫才をしようと思ったきっかけは？

　昨年２月、勤務している会社の若い社員の結婚式がありまして、ゲストにネコニスズを呼ぶことになったんです。登場の仕方に工夫を凝らそうと、会場で私が忍者に扮し、ネコニスズの舘野に変身するという設定にしました。そのときの私と息子の絡みがものすごくウケましてね。味をしめて、親子漫才したいなあと思ったんです。

――一緒に漫才をと言ったときの息子さんの反応はいかがでしたか。

　もちろんイエスです。息子は私の言うことには絶対反対しないので（笑）。唯一心配だったのは所属事務所。そちらも許可が取れて、８月に初めてのYouTube撮影を前橋総合運動公園の芝生広場のど真ん中でやりました。

――どんな内容だったのでしょう。

　第１回はコンビ名を決めました。私も息子もロン毛だったので、「ロン毛ーズ」「落ち武者」「親子漫才」。この３つの候補の中からどれがいいかを、ああだこうだ、言い合って、結局、落ち武者になりました。それからは息子が帰省する度に撮影していますが、最近仕事が立て込んでいるらしく、今年１月から更新されてません。「視聴者に忘れられちゃうから、早く帰ってこい」って言ってるんですが。

――漫才でのお父さまの担当は？

　ボケです。私の人生自体、ボケですから（笑）。

――親子の共通点の一つがロン毛です。

　私が伸ばし始めたのが最初なんです。５年前、前の毛は薄くなってきたけれど、横の毛はある。長くして武士のちょんまげみたいにしようと思ったんです。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の小栗旬みたいにしたいなあと…。

　その１年後くらいに息子も伸ばし始めて。「お前、俺が伸ばしたんで長くしてるのか？」と聞いたら、「多少影響はあった」と言っていました。

――親子仲がいいのですね。

　子どもの頃からかわいがって、甘やかして育てました。それには理由があって、わがままに育ってほしかったから。

　わがままになると自分の欲しいものは絶対に手に入れたくなる。子どものころのわがままは良くないけれど、人生は大人になってからが勝負です。最期までわがままを貫き通してほしい。欲しいものを追い求める人生を歩んでほしかったんですよ。

――お笑いの道一直線に進めと。

　そう。20年以上売れなくて、金もなくてかわいそうだったけれど。息子はお笑いが好きだから「辞める」と言ったことは一度もなかった。やっと「赤ちゃん」のネタでブレイクの兆しが見えた。ここからが頑張り時だと思います。

――忠次郎さんは元バイクレーサーだったそうですね。

　18歳からバイクレーサーを始め、修行のためフランスに１年、オランダに２年渡りました。世界チャンピオンを目指していたんですが、ヨーロッパに渡ることで満足しちゃったんですね。執念が足りなかった。当時のチャンピオンとレースをしたとき、あまりの差に愕然として、28歳でレーサーを辞めてしまったんです。

　息子には同じ後悔をさせたくない。いま、爆笑問題さんと同じ事務所に所属して、一流の芸人さんと共演する機会も増えた。それで満足してしまわず、お笑いの世界でとことん戦ってほしいと思います。

――どんな芸人さんになってほしいですか。

　子どもの頃からおとなしくて、他人を蹴落として前へ出ていくタイプではなかった。うちでは面白いことなんか言わないしね。それが良い意味で「赤ちゃん」というキャラとマッチしたんだと思います。

　いまの彼の個性をそのまま生かして、日本のお笑い界をリードしてくれるようになったらいいなあ。本人はそれを望んでいるのか、わからないけれど（笑）。