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聞きたい

【聞きたい 米原信さん▶2】
デビュー作、1月に発行

2024.11.19

【聞きたい 米原信さん▶2】
デビュー作、1月に発行

2022年のオール讀物新人賞の受賞作『盟(かみかけて)信が大切』含む短編6本をまとめた連作短編集が2025年1月に発行されます。米原信さんにとって待望のデビュー作。将来の目標を語ってもらいました。

締め切り20日で書き上げる

―初めて書いた小説『盟信が大切』が2022年、オール讀物新人賞に輝きました。70年の歴史のある賞で初の10代でした。

 まあ、びっくりしましたね。驚きました。信じられなかったけど、こうなったらやるしかない、作家になるしかないでしょう、と覚悟を決めました。

―タイトルにある「信」はペンネームから採ったのですか。

 いえ、まったく違います。偶然。締め切りぎりぎりで書き上げ、切羽詰まってタイトルを付けたら名前とかぶってしまった。後から気が付きました。「信用」、「信頼」を話の真ん中に据えたかったのです。

 ペンネームは実は高校を卒業する時から決めていました。本名のもじりです。

―小説で取り上げた鶴屋南北は江戸歌舞伎の奇才。『四谷怪談』は怪談劇の代名詞になりました。

 変なおっさんですよ(笑)。いい芝居も作るし、スキャンダラスな一面も持ち合わせている。

  そもそも自分は現在上演されている歌舞伎が好きなのですが、根底となる江戸時代の歌舞伎史にも目を向けなければならないと考え、資料を読むようになりました。南北の時代は役者も充実していて、いい作品が多いんです。

 受賞作の題材である『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』は忠臣蔵の外伝であり、四谷怪談の後日談でもあります。花組芝居で上演されたのを観たら、現代人から観てもこんなに面白いのか、どうしてこれが書けたんだと驚かされ、何か書きたくなって。それで、オール讀物新人賞の締め切り20日前から一気呵成に書き上げました。

―デビュー作が近く出るそうですね

 単行本として、来年1月下旬に発行の予定です。

 『盟信が大切』を含む短編6本をまとめ、『かぶきもん』という連作短編集にします。いずれも江戸歌舞伎が題材。楽しみのような、怖いような気持ちです。

―歴史小説でこれからも勝負しますか。

 とりあえずは時代物でやっていきたい。でも、それだけにとらわれたくはない。現代物、異世界物も書きたいですね。「何でもござれ」のスタンスでやっていきます。

小説と演劇の二刀流

―目標を聞かせてください。

 いつか直木賞を獲れたらと思っています。プロとしてやっていきたいという願いを込めて。

 実は小説でお金を稼げたら、演劇もやっていきたいんです。歌舞伎を題材にしている通り、小説と演劇の両方好きですから。二刀流? そうですね。

 理想であり、目標としているのは井上ひさし先生。書き方のスタンス、作風もそう。そこにオリジナルを注入して、自分のスタイルを確立していければいいなと思っています。

 ※【聞きたい 米原信さん▶1】はこちらから。

米原信(まいばら・しん)

2003年、前橋市生まれ。県立前橋高-東京大文学部3年。中学は剣道部、高校は演劇部に所属、脚本を書き主役を演じた。趣味は芝居の観劇。特技は歌舞伎役者の台詞を物真似する声色(こわいろ)。2022年、オール讀物新人賞(文藝春秋)で史上最年少、初の10代の受賞者となる。