interview
聞きたい
【私の一冊】『旅をする木』
エフエム群馬パーソナリティー 内藤聡さん
2024.10.17
夢中になって読みふけった本、人生を変えた本、窮地を救ってくれた本、一生大切にしたい本etc.エフエム群馬パーソナリティー 内藤聡さんにとっておきの1冊を聞きました。
人生の指標です
―『旅をする木』はどんな本ですか。
動物写真家、星野道夫さんのエッセイ集です。でも、動物のことはほとんど書かれていません。世界各国を巡り、現地の人との関わりを綴ってあります。
―星野さんのことはご存じだったのですか?
初めて星野さんを知ったのは白熊の写真でした。とにかく被写体との距離が近いのにビックリ。熊の表情は優しかったり、おどけていたり。言葉は通じないけれどコミュニケーションはしっかり取れている。「こんなすごい動物写真家がいるんだ」と大ファンになりました。
―「旅をする木」はどこが良かったのでしょう?
大学時代、初めて読んだのですが、胸に刺さる言葉が散りばめられていて、その衝撃と言ったら…。
「ガラパゴスから」という章では、ネパールの少数民族、シェルパのガイドで、アンデス山脈へ発掘調査に向かう探検隊の話が書いてありました。ある場所でシェルパの人々がまったく動かなくなった。なぜかと問うと、「速く歩き過ぎてしまい、心を置き去りにして来てしまった」と。
―言葉の力ですね。
はい。この言葉は、友人の結婚式の挨拶でも使ったし、慌ただしく会社経営をしている仲間を励ますときにも使った。時々、自分自身にも「心を置き去りにしていないか」と問いかけることもあります。
星野さんを真似して、大学時代はバックパッカーとして海外を旅しました。その経験がいまのパーソナリティーの仕事に生きています。
ーまさに人生に影響を与えた本ですね。
社会人になってから同じ本を文庫で3冊、単行本で1冊買い、何かにつけて読み返しています。年齢によって感動するポイントが変わってくるのはおもしろい。
「この本を読んでワクワクしなくなったら、僕の精神状態はかなりやばいぞ」とも思っています。まさに人生の指標です。
『旅をする木』
著者・星野道夫
発行・文藝春秋