interview
聞きたい
【私の一冊】『V字回復の経営』
ジンズホールディングスCEO 田中仁さん
2024.10.16
夢中になって読みふけった本、人生を変えた本、窮地を救ってくれた本、一生大切にしたい本etc. ジンズホールディングスCEO、田中仁さんのとっておきの1冊は―。インタビューの中で「ジンズ桶狭間の戦い」なる言葉が出てきました。果たして何だったのでしょうか。
会社改革の教科書
―私の1冊を教えてください。
『V字回復の経営』です。上場して2期連続赤字に陥り、会社を建て直さなければと焦燥感に苛まれていた時に読んだ、私の「会社改革の教科書」です。
何か参考になるものはないかと、片っ端から経営に関する本を読み漁り、当時の自分にピタッとはまったのがこの本です。
―どんな内容なのでしょう。
事業再建を専門とするコンサルタントである筆者がかかわった実話をもとにした会社変革ドラマです。
海外赴任から戻った主人公が赤字続きの会社の社長に抜擢され、2年以内に黒字にならなければ退任させてもらうと背水の陣を敷き、見事に成功させた話もあります。
―この本からどんな教訓を得ましたか。
要するに、トップが本気にならないと会社、組織は変わらないということです。逆に言えば、必要なのはトップの覚悟以外ないんですね。
勇気付けられました。これにのっとって改革を実行しました。2009年9月17日、失敗したら社長を辞める覚悟で挑んだ「ジンズ桶狭間の戦い」は、この本からの気付きを戦略に落とし実行したものです。
ビジョンなければ成長なし
―織田信長が今川義元を撃ち破った一戦。大将である信長自ら先陣を切ったとされます。
ファーストリテイリングの柳井正さんにお会いした時、「ビジョンのない会社は絶対に成長しない」と厳しい言葉をいただきました。「商売は王道を歩まないとだめだ」とも。本当にその通りだと思いました。
当時、業界で弱小だったジンズが大手に真正面から立ち向かったのです。
―具体的にはどんなことをしましたか。
ビジョンをもとに戦略を定め、業態を改め、新しい商品を作り出しました。原宿店の改装に合わせて、計量フレームを前面に出し、「追加料金0円」という新業態にしました。これが消費者の心をつかんだのです。
―いい教科書、師匠ですね。現在は会社経営とともに、前橋のまちづくりにも情熱を傾けています。
こちらは教科書にないことばかりですよ(笑)。ステークホルダーが多すぎて。
ただ、まちづくりも経営に通ずることはあります。徹底すること、中途半端はだめということです。成長できることに絞り込む、「選択と集中」が必要になります。
いつか、まちづくりに関する本を書いてみたいですね。
『V字回復の経営』
著者・三枝匡
発行・日経BP日本経済新聞出版本部