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聞きたい

【聞きたい 生形理菜さん▶3】
考えながら演じる劇団四季の「ゼロ幕」

2023.07.26

【聞きたい 生形理菜さん▶3】
考えながら演じる劇団四季の「ゼロ幕」

劇団四季の俳優として活躍する生形理菜さん。現在、演じている『ジョン万次郎の夢』の見どころ、演じるうえで心がけていること、そして将来の夢などを聞きました。(取材/阿部奈穂子)

台本にないバックボーンを考えながら

―いま演じているのは?

今年の3月からファミリーミュージカル『ジョン万次郎の夢』に参加しています。ジョン万次郎の妹、ウメのほか、アンサンブルとしてアメリカ人や日本人の女の子、合計5役を演じています。

撮影:阿部章仁

―ウメは何歳ですか。

自分では9歳という設定で演じています。兄の万次郎は14歳ですが、ウメはちょっと幼さがある方が話のエッセンスになるのではないかと考えました。

「沖の風は冷(ひ)やいけんね」と、お母さんが作った半纏を万次郎に着せてあげるシーンがあるんですが。この半纏は亡くなったお父さんの布団で繕っているんだそうです。だったら、お父さんの記憶が少し残っていた方がいい。そうすると6,7歳だと幼過ぎる。9歳あたりが妥当なのではないかと考えました。

―自分で、年齢を想定するんですか。

劇団四季では「ゼロ幕」と言っています。台本に書かれていないバックボーンなど、自由に考えを任せられている部分は、役者自身が想像しながら舞台に立つのです。海外作品など、設定が決まっている作品もありますが、『ジョン万次郎の夢』は四季のオリジナル作品なので、役者に委ねられた部分も多く、それも魅力の一つだと思います。

―考えることでお芝居も膨らみますね。

セリフは二言ですが。それを重要にできるかは、私の存在次第なので、とにかく丁寧に演じています。たった二言、されど二言。ウメ以外にも、長い航海の後に帰ってくる男たちを港で迎え入れるアメリカ人の女性は20歳ぐらいで想定しています。2幕冒頭に登場する、奉行所で取り調べを受ける万次郎を興味津々に見ている町の女の子は、6歳くらいの想定です。

日本とアメリカのかけ橋になった万次郎

―『ジョン万次郎の夢』は何人で演じているのですか。

28人です。演じる役が複数ある場合、着替えも大変で慌ててしまうことも。土佐のシーンで着物を着ているのに、アメリカ人のカツラをかぶってしまったり(笑)。もちろん、最終チェックできちんと正しますが。

―『ジョン万次郎の夢』の見どころを教えてください。

諦めない心や人を信じる心、万次郎さんの数奇な運命に乗せて、ダイレクトにメッセージが伝わってくるとても魅力的な作品です。「つらいときには夢を思い出そう」「道は遠くても歩いてゆこう」など、三木たかしさんの音楽によってまっすぐ心に突き刺さるメッセージにあふれています。

―歴史に基づいた物語ですよね。

勝海舟や福沢諭吉など歴史上の人物もたくさん登場します。作品に参加するまで、万次郎さんがどんな人物か詳しく知らなかったのですが、知れば知るほど本当に面白い人生だなと。鎖国していた日本を開国し、日本とアメリカのかけ橋になった。こういった歴史上の人物のお陰で、今の日本がある。史実に基づいて描かれているところも、楽しんでいただけるのではと思います。

撮影:阿部章仁

いつも心にありがとう

―これからどんな俳優さんを目指しますか。

子どもの役が多かったので、少し、大人な魅力を感じてもらえる役にもチャレンジしてみたいという気持ちはあります。とはいえ、私はどんな役でも楽しく取り組めるタイプなので、舞台に立てることがうれしくて仕方ないのです。

ー最後に、座右の銘がありましたら教えてください。

「いつも心にありがとう」。感謝の心は絶対に忘れないでいたいと思っているので、謙虚に生きていきたいです。

うぶかた・りな

1988年、伊勢崎市生まれ。前橋女子高―群馬大教育学部美術専攻卒。県内のデザイン会社勤務を経て、2011年4月、劇団四季研究所に入所。同年9月、「思い出を売る男」の花売り娘役で初舞台。「魔法をすてたマジョリン」のマジョリン、「王子とこじき」のトム・キャンティなどさまざまな役を演じる。