interview
聞きたい
【聞きたい宮田裕章さん5▶︎】
デジタルグリーンは「めぶく。」
2023.02.11
白井屋ホテルの誕生以来、すっかり前橋通になった宮田裕章さん。地産地消から新しい食文化を創り出す「上州キュイジーヌ」を絶賛します。デジタルとスローの融合で、いろいろな「美味しさ」に出会える街になると期待しています。
食のネットワークで盛り上げる
―前橋は東京から1、2時間です。赤城山もあり、観光地としてブラッシュアップしています。
前橋はさまざまな可能性があります。白井屋ホテルというハイコンテクストのアートと建築があり、すでに面白いコミュニティーを形成している。その先に何を作るかといえば、日本で一番期待されているのは食です。
ホテルの中のザ・レストランの食事とノンアルコールのペアリングは日本でトップの1つでしょう。シェフとソムリエの共鳴が素晴らしい。
彼らが取り組んでいる「上州キュイジーヌ」、地産地消の取り組みは素晴らしいコンテンツになっています。
あのレストランだけでない食のネットワークの中で、次はここに行きたい、次はどこでという、食の魅力をみんなで創って、盛り上げることが大切でしょう。
―美味しいものがあれば山奥でも行列ができたりしますね。
富山県の山の中に富山駅から車で2時間かかる辺鄙な場所にフランス料理の店があり、ここは素晴らしかったです。わざわざ行く価値があります。
―前橋市は「デジタルグリーンシティ」構想を掲げています。デジタルの力を最大限活用する「スマートシティ」とゆとりある生活や自然を享受する「スローシティ」の融合です。
いい発想ですね。デジタルとスローは矛盾しない。
デジタルの初期ですかね、大都市集約型の大量生産、大量消費がもてはやされた時代は人々が歯車のように社会に飲み込まれていった。周囲のスピード合わせなければならなかった。象徴的なのが満員電車。アンチスローライフでした。
デジタルというと前の大阪万博(1970年)で目にした、画一的な印象があるかもしれない。
これからのデジタルはそういうものではない。一人一人に寄り添うのがデジタルの本質なので、一人一人の心地よいスピードで生きることができる。
2025年に開かれる大阪万博ではテーマ事業のプロデューサーを務め、会場の中心に藤本壮介さんと一緒に森を造っています。
森の中を散策するような心地よさ、世界に調和するような感覚をデジタルの一つの感覚として味わってほしくて。
「デジタルグリーン」、いい表現です。まさに「めぶく。」前橋です。
気持ちのいい森の中を歩く感覚
―ありがとうございます。最後に10年後の前橋の街を想像してください。
デジタルグリーン構想が進めば、前橋は東京、ニューヨーク、上海といった巨大都市がもっているものと違う、魅力的な最先端があると同時に距離の近さ、ヒューマンスケールの中で、そこに生きる人たちの大切なものと繋ぐコミュニティーを感じることができる。
現実に緑が増やされていく。そこに多様な人の文化が息づいて、前橋を歩くことが気持ちのいい森の中を歩くような、人と人、人と自然、人と世界が調和するような中を巡る体験となるでしょう。
美食あり、アートがあり、音楽がある。前橋に行くと、いろいろな「美味しさ」に出会え、自分の未来が開けるような感覚を感じる。そんな素敵な場所になっているでしょう。
みやた・ひろあき
1978年生まれ。東京大大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。保健学博士。専門はデータサイエンス、科学方法論。慶應義塾大医学部医療政策・管理学教室教授。2025年の日本国際博覧会(万博)テーマ事業プロデューサーを務める。