interview
聞きたい
【聞きたい堀雅人さん3▶︎】
コントの考え方を教えてくれた本たち
2022.11.04
自ら名乗るなら、肩書きはコント作家。テレビ番組やアニメの構成、脚本を手掛ける堀雅人さん。「笑っていいとも!」や「めちゃ×2イケてるッ!」など時代を代表する人気番組にも携わってきた。この道に入ったきっかけや現在の仕事、これからの展望について聞いた。
―堀さんは前橋生まれで高校まで群馬育ち。サブカルチャーの世界に興味を持ったきっかけは?
中3の時、テレビの深夜放送が24時間になりました。深夜番組を山ほど見て、『宝島』っていう雑誌を読んで、サブカルチャーに興味が向いていきました。
その頃に出会った本たちが刺激的で…。特に赤瀬川原平さんの『東京ミキサー計画』(PARCO出版)。 60年代にパフォーマンスアートみたいなことを街中でやったり。美術展をやるっていって、ギャラリーを借りて、初日にクロージングパーティーをして閉め切っちゃったり。「こんな昔に変なこと考えている人がいた」っていうのがおもしろくて。
コンセプトを持って変なことをやるっていうのは、コントの核となるアイデアを作り出すのと近い考え方。それをこの1冊でだいぶ学んだなと思います。
―高校生の堀少年の生き方に影響を与えたわけですね。
そうです、大いに。赤瀬川さんは小説家なので、当然ですけど文章もすごくステキなんですよ。論理的で理知的なことをくだらなく書いている。逆もある。くだらないことを論理的にジェントルに伝えている。そんな点も影響を受けたような気がします。
好きなものを味わい尽くすとフォームができます
―コント作家を目指す若い人たちにアドバイスするとしたら。
いまは1,5倍速でいろんなものを見なくちゃいけない、知っておかなくちゃいけない時代だと思っている人が多い。でも詰め込まずに、1個好きなものを味わい尽くしてほしい。そうすると、基本的なモノの考え方が培われます。
僕はとり・みきさんのマンガ『ポリタン』を中2のときに買ってずっと読んでいました。とりさんはロジカルに笑いを作られる漫画家さん。何度も読んでるうちに、このおもしろいギャグはどういう風に考えたのかなと想像し始めて、「こういうとっかかりでこのネタを思いついたんじゃないか」なんて分析みたいなこともしたり。それは繰り返し同じ本を読んでいたから、そこまで考えがいっちゃったってことなんだと思います。
―それがいまに生きているんですね。
知らないうちにいまのネタの作り方の訓練になっていましたね。スポーツでいうところのフォームみたいなもの。それは自分の好きなものを見つけて、味わい尽くしていると多分、自然とできてくる。それができてくると将来なにをやるにしても、一歩の踏み石になると思います。
ほり・まさと
1972年、前橋市生まれ。富士見中―渋川高卒。フリーの音楽ライターを経て、2001年~『めちゃめちゃイケてるッ!』『笑っていいとも!』など人気番組の放送作家に。11年~16年、『ZIP!』の朝アニメの脚本を担当。現在は『呼び出し先生タナカ』の構成作家、ショートアニメ『ROLY POLY PEOPLES』の脚本を手掛けている。