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食べたい

覚瑛 (かくえい) 
前橋で蘇る古き良き洋食

2025.08.28

手間の積み重ねが皿に宿る

  扉を開けると、どこか時間がゆっくりと流れている。テーブルは五つだけ。小さな店で、出迎えるのは水野貞明さん。半世紀近く、洋食と向き合ってきた人だ。

 銀座や日本橋で修業を積み、ホテルやレストランを渡り歩き、前橋の「音羽倶楽部」では20年あまり料理長を務めた。その間に覚えたことは、料理は派手でなくていい、ということ。手間を惜しまず、古い作り方をそのまま続けることが「味」になる。そう話す目は、どこか少年のように澄んでいる。

▲ポタージュとサラダ。ドレッシングももちろん自家製

 最初に出てくるポタージュスープ。なめらかな舌触りの奥に、ブイヨンの余韻がじんわり広がる。スープひと口で「昔の洋食」に連れて行かれる感じだ。

一皿の中に、いくつもの物語

 頼んだのは「昔ながらのオムライスに覚瑛特製ハンバーグと無頭海老&クリームコロッケ添え」。長い名前のとおり、皿の上はにぎやかだ。

 オムライスは薄焼き卵がふんわりとご飯を包み込む。ベーコン、タマネギ、マッシュルーム。自家製のケチャップは甘すぎず、酸っぱすぎず、ちょうどいい。フォークを入れると、卵がほどけて湯気が立ちのぼる。その瞬間に心がほどけてしまう。

▲昔ながらのオムライスに覚瑛特製ハンバーグと無頭海老&クリームコロッケ添え

 横に並ぶハンバーグは、肉の旨味を閉じ込めて、デミグラスソースが静かに受け止める。エビフライは衣の中で身がプリッと弾み、クリームコロッケは舌の上でとろけて消える。タルタルソースまで手作りで、付け合わせのパセリすら「昔の洋食」そのものだ。

 途中で出された烏龍茶。これがまた嬉しい。口の中がさっぱりして、さあまた食べるぞとファイトが湧いて来る。

 

▲連れが頼んだ「和風ハンバーグステーキ伝統のオニオンソース 焼き野菜添え」

 一皿を食べ終えるころには、お腹だけでなく、気持ちまでも満たされている。覚瑛の洋食は、懐かしさを超えて「やさしさ」を食べる料理だと思う。

店舗情報

覚瑛 (かくえい)

お問合せはこちら
027-212-5485
住所 前橋市元総社町840-8
営業時間 11時30分~ 14時
17時30分~20時
定休日 水曜