interview
聞きたい
瀬谷ルミ子さんが児童書発行
『戦争は終わらない?』
2026.10.10
前橋女子高出身で、世界各地の紛争地で武装解除や紛争予防に取り組んできた瀬谷ルミ子さんが、「戦争は終わらない? 武装解除・紛争予防の現場から」(Gakken)を発行した。小学校中学年以上を対象にした児童書。戦争が始まる前に何ができるのか、戦闘が終わった後にどう平和を築くのか。自身の経験や現地で出会った人たちのエピソードを交えながら、子どもにも分かる言葉で紹介している。
戦争には「始まる前」がある
――まず、どんな本なのでしょう。
戦争が実際に始まる前に防いだり、争いが起きた後に平和をつくったりするためにできることがたくさんあることを伝える本です。外交努力のほかに、信頼づくり、武装解除、人を育て紛争予防のためのしくみをつくることなど、いろいろな方法があります。でも、そういう選択肢があること自体が、あまり知られていないと思うんです。
戦争が起きるとニュースになりますが、平和はニュースになりません。そうすると、戦争をどのように行うかの知識は増えるのに、平和をどうつくるかを知らないままになってしまいます。世界の戦争や日本周辺の有事を見て、不安になったりこのままではいけないと思ったりしている人たちも多いと思っています。、そんななか、紛争の最前線で、軍事だけではない方法でどう安全を守り、平和をつくっていくのか。私が現場で経験してきたことを通して書きました。
▲「戦争は終わらない? 武装解除・紛争予防の現場から」(Gakken)
――なぜ、子ども向けに書こうと思ったのですか。
小学3、4年生くらいになると、ニュースを見ながら、現実の社会に目が向き始めると思うんです。環境問題や災害など、いろいろな社会問題にも関心を持つようになります。
でも戦争や平和となると、考えるきっかけになる情報が見つけにくい。子どもから「どうして戦争をしているの」「どうしたら終わるの」と聞かれても、大人もどう答えたらいいのか悩むテーマです。毎日のように戦争が報道されているのに、解決の糸口が分からないままになってしまう。
そんな時に、この本を通して、解決するための選択肢があることを知ってもらえたらと思いました。
▲瀬谷さん
17年前のテレビ番組から出版へ
――出版のきっかけは。
2年ほど前、Gakkenの児童書編集者、永淵大河さんから企画をいただきました。
永淵さんは2009年に放送されたNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で私の活動を見てくださっていたそうです。中学生だったとか。それを覚えていて、出版社に入り、子ども向けの本にしたいと企画してくださったんです。
永淵さんからは、これまで児童書の戦争を扱った本は、第二次世界大戦を振り返り、その反省を伝えるものが多かったけれど、今の世界情勢を考えると、もう一歩踏み込んだ内容が必要なのではないかという話もありました
――子ども向けに書く難しさはありましたか。
ありました。平和という言葉自体がすごく曖昧ですよね。それをどうすれば小学生にも伝わるのか。現場でどんな会話をしたのかを思い出したり、戦争に巻き込まれた子どもたちのエピソードを入れたりしました。
何度も書き直して、完成までに3カ月くらいかかったでしょうか。
▲ケニアの子どもたちと
「?」の答えを自分で見つけて
――タイトルの「戦争は終わらない?」には、どんな思いを込めましたか。
読む人への問いです。この本を通じて、自分なりの答えを見つけてほしいと思っています。
私は紛争地に行って平和支援をする仕事をしていますが、戦争を終わらせ、平和をつくるためにできることはこれ以外にもたくさんあります気になったことを調べる、活動している人に寄付する、誰かに話してみる。それでもいい。月に一度でも、紛争地のことを考えて何か行動してみることもできます。
世界の戦争を見て、何をしていいか分からない、でも何もしないのも嫌だという人もいると思います。そんなモヤモヤを、自分なりの行動につなげてもらえればと思っています。
――子どもたちに、最も伝えたいことは。
まず、自分にもできることがあるんだと思ってほしいです。
本には、私が群馬の田舎から、どうやって今の仕事をするようになったかも書きました。特別な子どもだったわけではありません。海外にも行ったことがなかったし、自分に取り柄があるとも思っていませんでした。
田舎で空を見上げたり、アリの巣をつついたりしていたような子でも、社会を変える力を持つことはできる。世界を変えるとか、紛争地にいる誰かの命を救うことも夢物語ではありません。
戦争や平和には、大人だって答えを持っていないことがたくさんあります。だから大人が子どもに教えるのではなく、親子でも、祖父母と孫でも「自分たちに何ができるだろう」と一緒に考え、できることを考えてほしい。この本が、そのきっかけになればうれしいですね。
▲アフガンの重火器集積所で
せや・るみこ
1977年、桐生市生まれ。前橋女子高―中央大学総合政策学部卒。英ブラッドフォード大学紛争解決学修士課程修了。ルワンダ、アフガニスタン、シエラレオネなどで国連PKO、外務省、NGO職員として勤務を経て、認定NPO法人REALs理事長として、ガザやシリアなどで活動中。2009年、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演。2011年、Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人25人」に選出され、2022年には米ニューヨーク・タイムズ「世界に足跡を残す10人の女性」に選ばれた。2025年読売国際協力賞受賞、2026年英国ブラッドフォード大学より名誉博士号を授与。


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