interview
聞きたい
小麦アレルギー、米粉で再出発
28歳パティシエの決断
2026.04.10
大好きなケーキ作りを続けられないかもしれない――。前橋市の洋菓子店「Roseraie(ロズレ)」のオーナーパティシエ、髙島葵さんは昨年、小麦アレルギーを発症し、今年1月に診断を受けた。店をやめようかと思うほど追い込まれたが、立ち止まらなかった。小麦を食べられない人にもケーキを届けたい。試作を重ね、グルテンフリーの洋菓子店として再出発した。
(取材/阿部奈穂子)
突然、体に起きた異変
髙島さんが敷島公園ばら園近くに店を開いたのは2023年4月。フランス語で「ばら園」を意味する店名「Roseraie(ロズレ)」に、「バラのように特別感のあるケーキや焼き菓子を届けたい」という思いを込めた。繊細なデコレーションケーキや焼き菓子は評判を呼び、少しずつ常連客も増えていった。
▲バラをあしらったデコレーションケーキが名物だった
転機は2024年夏ごろだった。だるさが抜けず、日中の眠気に襲われる。不眠やむくみも続いた。ひどい時には座り込んでしまうような動悸も。さらに、小麦粉を触ると手が激しく荒れ、血がにじむこともあった。洋菓子店にとって、小麦は毎日向き合う材料。その小麦が自分の体を苦しめているかもしれない。違和感は日に日に大きくなっていった。
2025年1月、病院で告げられた診断は「小麦アレルギー」。頭が真っ白になった。ケーキ作りが好きでこの道を選んだ。夢だった店も持てた。その仕事をもう続けられないのではないか。店をやめることも本気で考えた。
▲25歳、お店をオープンしたばかりの髙島さん
レシピのない道を行く
それでも情熱までは消えなかった。髙島さんの中に残ったのは、「私と同じように困っている人がいるのではないか」という思い。「小麦アレルギーでケーキを食べられない人のために自分が作ろう」。苦しさの中で進む方向が少しずつ見えてきた。
決めたのはグルテンフリーのケーキ作りだった。小麦粉の代わりに使うのは国産の米粉。だが簡単ではない。県内はもちろん都内を見ても、参考にできる店は数えるほどしかない。頼れるレシピもほとんどなかった。すべてを自分で組み立てるしかない。
▲グルテンフリーの焼き菓子
何度も試作した。膨らみ方、口どけ、甘さの出方、クリームとの相性。少し配合を変えるだけで仕上がりは大きく変わる。
特にスポンジは難しかった。「米粉のスポンジというとパサパサする印象を持つ人が多い。そこをちゃんとおいしく、もっちり仕上げるのが本当に大変でした」と振り返る。
▲数え切れないほどの試作を繰り返して
誰かの希望になるケーキ
2025年4月、オープン2周年の日。グルテンフリー専門店として新たなスタートを切った。
ショートケーキは平日で8、9種類、土日で10種類ほど。以前より数は絞った一方、フィナンシェやスコーンなど焼き菓子の種類を増やした。持ち前のデザインセンスはそのままに、美しいケーキがショーケースを彩る。見た目だけではグルテンフリーと気づかない人も多い。
▲繊細で美しいショートケーキの数々
お客さんの反応は想像を超えた。「こんなに軽いケーキは初めて」「胃もたれしない」「重くない」。その言葉に励まされた。
なかでも胸に残ったのは小麦アレルギーの子どもを持つ母親たちの声だった。「ずっとケーキを食べさせてあげたかった」「願いがかなった」。各ケーキの表示には卵や乳など7大アレルゲンを明記するようになった。味だけではなく、安心も一緒に届ける店になった。
▲子どものバースデーに
▲各ケーキに7大アレルゲンを明記
今年2月には敷島町から上細井町へ移転した。店は以前より小さくなったが、その空間には髙島さんの覚悟と工夫、そして諦めなかった時間が詰まっている。
4月15日、「Roseraie」は3周年を迎える。
▲店内ではイートインもできる
店舗情報
Roseraie(ロズレ)
- お問合せはこちら
- 090-2350-6739
| 住所 | 前橋市上細井町1967-1 |
|---|---|
| 営業時間 | 10時~18時 |
| 定休日 | 店舗のインスタグラムを確認 |
| ホームページ | https://p-roseraie.com/instagram/ |


