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朔太郎 歌人讃える自筆書簡
歌人・中澤豊三郎の孫が寄贈
2025.10.17
萩原朔太郎が大間々町(現みどり市)生まれの歌人、中澤豊三郎に宛てた自筆の書簡が前橋文学館に寄贈された。第1詩集『月に吠える』を発刊する少し前に送った封書1通とはがき2通で、当時15歳だった若き歌人を激励している。前橋文学館で10月17日、感謝状贈呈式が開かれた。書簡は11月にも公開する。
前橋文学館で11月公開
中澤豊三郎は1898(明治31)年2月、大間々町生まれ。1913(大正2)年、15歳の時に萩原朔太郎が選者を務めていた「上州新報」の歌壇に投稿した短歌が朔太郎の目に留まり、翌年と1917(大正6)年に封書やはがきが送られた。
封書は縦10㌢、横7・5㌢と小さい封筒に合わせて4枚の便せんを分割、合計16㌻にわたる長文が知さな字でぎっしりと記されている。
▲相当な長文に朔太郎の熱意が感じられる
文中には「寄稿者で私を悦ばしたものは須藤みどり(須藤泰一郎)君と古木松葉君と 河原森(河原侃二)君と、それから君および他の一、二の人々でした。就中、君の未来には最も嘱望をよせてゐました」などと絶賛していた。
豊三郎は「賞賛の手紙をもらい、短歌への情熱と自信が大いにかきたてられた」と感激し、地元の文学青年の集団に参加して盛んに短歌を詠んだ。
若山牧水と北原白秋を称える記述もあり、「牧水と白秋が現代歌壇の二大明星でせう。(中略)そのすきずきは各人の個性によって違っても根本のリズムは『真実』の一語に帰しませう」と豊三郎に手本とするよう勧めていた。
▲便せんに綴った朔太郎の直筆の言葉
▲大将6年元日に送った年賀状
111年後、孫から孫へ
書簡は豊三郎の孫にあたる中澤哲夫さんが保管していたものを「萩原朔太郎記念」である前橋文学館に寄贈した。
書簡について、中澤さんは「朔太郎さんが28歳、祖父が16歳の時に同郷の後輩ということで優しく接していただいた。非常に貴重な手紙であり、熟読して衝撃を受けた。素晴らしい文面で多くの人に見ていただきたい。111年の時を経て、お孫さんにお返しできる」と特別館長の萩原朔美さんに託した。
▲2人の孫。右が中澤さん
萩原朔美さんは「28歳が16歳に手紙書きますか。歌人として、その年齢を外して才能や感性に対して書いたのだろ思う」と推測していた。


