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ジンに乗せて群馬を世界へ
「双子蒸留所」オリオン通りで始動

2025.05.15

ジンに乗せて群馬を世界へ
「双子蒸留所」オリオン通りで始動

 クラフトジンの醸造所が、前橋・オリオン通りに誕生する。前橋と東京を拠点にデザイン関係の仕事を行う「NIRO&Co.」代表、二口圭介さんとアメリカ在住の友人、ジャン=リュックさんが共同経営する「双子蒸留所」。5月14日、スピリッツ製造免許の申請が認可され、試作品づくりに取り掛かる。年内の商品化を目指す。「群馬の旬の果物や、赤城山に自生するハーブ、草花を使った地元ならではのフレーバーを生み出したい」と意気込む。
(取材/阿部奈穂子)

自由な酒。可能性は無限大

 蒸留所の内部は3つの空間に分かれている。赤色に輝く銅製のジン蒸留機と4つのタンクが置かれた蒸留室、隣には瓶詰めや分析をする部屋、入口近くには試飲のできる販売所がある。

 蒸留機の容量は250㍑。「1回運転すると180㍑の蒸留酒ができる。それを水で希釈し、アルコール度数40から40後半のジンを作ります。レシピごとに、味わいや香りのバランスを見ながら最適な度数を追求していきたい」と二口さん。

 ジンはジェニパーベリーという針葉樹の果実を使えば、原料アルコールの種類は問わない。前橋や群馬の特産品を加えることもできる。数種類、数十種類をかけ合わせることも可能。「作り手が自由に創作しやすい酒で、無限の可能性がある。そこにも惹かれた」

▲アンティークな棚を使い、準備を進めている販売所

▲蒸留機とタンクの並ぶ蒸留室

 蒸留所は二口さんとジャン=リュックさんが共同経営する。二人は10年来の友人。共に双子を持つ父親であり、子どもたちにより良い未来を届けたいとの思いから双子蒸留所と名付けた。

 アメリカ・ロス・アルトス市で人気のカクテルバーラウンジ「AmandineProject(アマンディーン・プロジェクト)」を経営するジャン=リュックさん。日本人の奥様や友人たちとともに、年に一度は日本を訪れ、前橋にも度々、足を運んでいる。2023年春には白井屋ホテルで、Amandineのポップアップを開くほど、前橋に愛着を持っている。

 「ジャン=リュックにとってジンの蒸留所をつくることは長年の夢だった。僕らの大好きな前橋で実現できたのはうれしい限り」と二口さん。

▲AmandineProjectで。中央の赤い服の男性がジャン=リュックさん

 蒸留作業は新潟県出身で、地域おこし協力隊で前橋を訪れていた前田慶亮さんが、24年春の任期満了後もそのまま前橋に残って蒸留することに決まった。双子蒸留所の開店を前に、鹿児島や川越の蒸留所で修業を積んできた。

 前橋生まれのジンは建物内で販売するほか、ジャン=リュックさんの住むアメリカ・カリフォルニア州へ輸出する予定。「群馬の飲食店には価格を押さえて卸したい。地元の名物になれば」と二口さん。

 群馬の食材を掛け合わせてどんな新しいフレーバーが生まれるか、楽しみだ。

▲かつては書店や高齢者向けサロンだった建物をリノベーション

▲ロゴも出来上がった

全国でクラフトジンブーム

 日本洋酒酒造組合によると2024年のジンの出荷量は550万㍑を超え、5年前の2019年と比べると4倍強となった。背景には、食事に合わせやすく、飲みやすいと大手メーカーが販売に力を入れたことに加え、全国各地で小規模メーカーがクラフトジンの製造販売を始めたことが挙げられる。地域の特産品を使った個性的な商品が次々と開発されている。

 ジンは原料の縛りがほぼなく味の表現をしやすいうえ、熟成は不要。新規参入への障壁が低く、今後もクラフトジンのブームは広がっていきそうだ。