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【体験ルポ】前橋の新名所
赤城宿「清芳山荘」に宿泊してきました

2024.10.14

【体験ルポ】前橋の新名所
赤城宿「清芳山荘」に宿泊してきました

 赤城南麓に建つ築100年を超える書院造りの「清芳山荘」。広い庭園に囲まれた邸宅は大正時代の貴重な建築を残しつつ、快適に過ごせるようリノベーションされ、2024年7月、一棟貸し古民家ホテルとして生まれ変わった。四季折々に姿を変える緑豊かな庭園を眺めながらおもいおもいの時間を過ごせる。前橋の新名所になりそうな「清芳山荘」に宿泊し、忘れられない体験をしてきた。
(取材/阿部奈穂子)

まるで重要文化財

 赤城県道を市街地から北へ約30分車を走らせると、右手に大きな長屋門が見える。重厚な木の看板には、中曽根康弘氏が書いた「清芳山荘」の文字。前橋で不動産管理業を営む「江原本家」の表札もある。

 1913(大正2)年に建造されたこの邸宅は日銀副総裁、木村清四郎氏の別邸だった。木村氏と親交のあった江原本家が譲り受け、1985(昭和60)年に東京から赤城山に移築。しばらく使われていなかったが、古民家を活用した宿泊事業を進める「LOOOF(るうふ)」(山梨県笛吹市)が7月、古民家ホテルとして蘇らせた。

▲立派な長屋門

 門から母屋までは車で数10メートル。歩くと2分ほどかかる。それほど敷地が広いのだ。「いらっしゃいませ」。本日、お世話をしてくれるLOOFのコンシェルジュ、加藤太さんが出迎えてくれた。

 庭園の木々はそろそろ紅葉が始まっている。一面赤や黄色に染まったらどれほど美しいことだろう。

▲付かず離れずの距離でお世話をしてくれるコンシェルジュの加藤さん

▲入口の付近には色づき始めたもみじ

 木の玄関扉を開き、中へ入る。大きな花瓶にいけられた植物のオブジェ、そして凛とした空気。ジャズのBGMも聞こえる。

 さらにもう一枚ふすまを開けると、50畳はあるだろうか、窓に囲まれた大きなリビングルームが広がっている。これには圧倒された。

 窓ガラスは、いまではもう作り手のいない手延べガラス。表面が波を打っている。まるで重要文化財の中に居るようだ。

▲玄関を開けると

▲ふすまを開けると

贅沢な時間の過ごし方

 ウェルカムドリンクは桑の葉茶と花インゲン。どちらも地場のものを使っているという。

 用意された作務衣風の室内着に着替え、夕食までの時間に風呂とサウナを楽しもう。

 浴室は驚くことに、畳張りになっている。素足に心地よいし、滑らないのがいい。浴槽も浴室の壁も贅沢なヒノキ。香りがたまらない。

▲ヒノキに囲まれた浴室。床は畳張り

▲窓を開けての入浴は最高

 ロウリュのできるサウナと屋外の水風呂もある。これらも一人占めできるのだ。あまりの気持ち良さに何度も繰り返し入っていたら、体が温まり、お腹がすいてきた。

 夕食は地場の素材を使ったすき焼きがメインのコース。「A5ランクの上州牛をご用意しました」と加藤さん。赤城南麓で育ったブドウ100㌫でつくるワイン「Nanroku」で乾杯して、お肉を食べる。うーん、とろけるように美味しい。

▲サシが入った見事な上州和牛をすき焼きに

 長い夜は、庭に出て、焚火を楽しみながら過ごした。これも加藤さんが用意してくれる。

 聞こえてくるのは虫の音とパチパチと薪のはぜる音だけ。真っ赤な炎を眺めていると日常のストレスがスーッと溶けていくのを感じる。

 「薪の火で焼きまんじゅうを炙って召し上がりませんか」。素まんじゅうと味噌と刷毛を持ってきてくれた。

▲赤城の薪で焚火体験もできる

▲美味しかった焼きまんじゅう。朝日町の「田中屋本店」の商品とのこと

 陶器の素焼きだるまにマーカーで色付けする体験も楽しかった。真剣に取り組んでいたら、あっという間に3時間。

 普段はPCやスマホをいじっている時間が、創作の時間に。デジタルデトックスに大成功という感じ。

 そのせいだろうか、あるいはクイーンサイズの快適なベッドのせいだろうか。久しぶりの快眠。鹿鳴館をイメージさせる寝室も素晴らしかった。

▲できあがっただるま

▲窓枠が印象的な寝室にはクイーンベッドが2台

 翌朝は6時にすっきりと目が覚めた。朝の光の中で広い庭を散策する。かつて使われていた井戸の跡やこの地を守るように立つ小さなお地蔵さん。道に敷かれたレンガは富岡製糸場や東京駅で使われていたものだという。風情がある。

 朝食は昨晩、加藤さんが用意してくれたせいろを自分で火にかけて、いただく。普通の旅館とは違い、極力、宿泊者のプライベートな時間を長くするための工夫だという。

▲印象的なレンガ。敷地内には2棟の蔵がある。こちらも宿泊施設になっている

▲朝食はせいろ蒸しと群馬県産コシヒカリのご飯

 遠くまで出かけるだけが旅ではない。赤城南麓でこんなに豊かな体験ができるとは。

 「清芳山荘」のほか、赤城南麓には5棟の一棟貸しの古民家ホテルが点在し、総称で「赤城宿」と呼ばれている。それぞれに個性が違うので、好みの一棟を探してみるのも楽しいだろう。

前橋新聞mebuku編集長のオススメ①
1人サウナで「整う」

 サウナを独占しました。温度を好きに設定でき、水風呂も好きなだけ入れます。汗をかきやすいように体を洗い、檜の風呂で体を温めたら、サウナハットを被って、いざ入室。温度は90度にしました。

 砂時計は15分計。まあ、無理せず10分を3セット行きましょう。じわじわと汗が出てきました。

 そろそろやりますかね。ロウリュを。熱したサウナストーンに柄杓で水を掛けると、ジュワーと立ち上がる熱い蒸気。体の芯が熱くなるのが実感できます。

 同時に汗が一気に噴き出てきます。カ・イ・カ・ン。好きな時に好きな量、ロウリュができるなんて。サウナーには最高の贅沢でしょう。

 十分に汗を流したら、屋外にある水風呂へ。火照った体が冷んやりしてきます。水滴をぬぐい、サウナポンチョを着てリクライニングチェアに横たわります。ふと、夜空を見上げると、赤城山の方角に北斗七星を見つけました。久しぶりだね、星観るなんて♪

▲ヒノキづくりのサウナ

▲屋外の水風呂

前橋新聞mebuku編集長のオススメ②
上州和牛を「食す」

 夕食は居間でいただきます。上州牛のすき焼きでした。赤城南麓育ちの赤ワイン「Nanroku」を開けましょう。旬の野菜や魚を使った前菜3品と茶碗蒸しをいただき、メーンを待ちます。

 コンシェルジュの加藤太さんが鍋奉行になってくれました。割下が張られた鍋にシイタケ、マイタケ、焼き豆腐、シラタキを見栄えよく入れていきます。「まだ下仁田ネギではないのですが、できるだけ前橋産、群馬県産の食材を使っています」。野菜は少し煮込み、割下の味を染みさせていきます。

 待ちに待った主役の登場です。A5ランクの上州和牛は見事なサシの入り方。ほんのりピンク色が残った状態で取り出し、溶いた卵に絡めます。美味しいに決まっていますね。肉は柔らかく、しっかりした旨味も感じます。ワインが進むことといったら。

 〆は水沢うどん。もうお腹いっぱいと思っていたのに、するする入ります。デザートは柿とゴールドキュウイ。こちらは別腹ですから。

▲地元の素材を使った前菜

▲具だくさんのすき焼き

宿泊情報

清芳山荘

お問合せはこちら
055-244-3895
住所 群馬県前橋市富士見町赤城山1825
ホームページ https://akagi-shuku.com/hotels/seiho-sanso/
チェックイン 15時
チェックアウト 11時
料金(1泊2食付き) 1人:3万6850円~(4人利用時)
定員 8人