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【灰になった街2025】vol.1
真の市民ミュージカル 74人でいざ出発
2024.08.29
戦争や空襲の悲劇を風化させないよう、ミュージカルで伝えていこう。全員がアマチュアで構成される「まえばし市民ミュージカル」は、戦後80年を迎える来年8月、「灰になった街」を上演する。戦禍を生き、1945(昭和20)年8月5日、市街地を襲った空襲に翻弄された前橋の人々を描いた作品。オーディションで選考された74人が集まり、8月28日、発会式が行われた。本番に向け、これから1年かけて練習を積んでいく。
(取材/阿部奈穂子)
すべての役に名前とセリフ
下は小学4年生から上は70歳まで、職業も立場もさまざまな74人が前橋市第三コミュニティセンターホールに集合した。
「今日から1年間、皆さんは歌手でありダンサーであり役者であるという自覚をもって過ごしてほしい。体を労わり、喉を酷使することのないように」とまえばし市民ミュージカル会長の植松盛夫さん。
死者535人、焼失家屋11460戸の大惨禍となった前橋空襲を市民ミュージカルという形で上演し、後世に伝えていく。全国的にも稀有な試み。
「主役だけでなくすべての役に名前を付け、セリフと見せ場を作る。その分、ミュージカルは長くなるが、内容が充実すれば観客は長いと思わない」と総監督の新陽一さんは檄を飛ばす。
8月上旬に開かれたキャストオーディション。参加希望者91人が劇中で歌う「海ゆかば」の歌唱とセリフの2課題に臨んだ。
技量の高い人を選抜するオーディションではない。歌って踊って芝居をする練習に適合できるかどうかを審査した。
「今年は過去に演劇やミュージカルをやったことのある実力者が多かった。多士済々(たしせいせい)という感じです」と新さん。
小4から70歳まで
「歌が大好きで小学校では合唱部。市民ミュージカルは母に勧められ、面白そうだなと思って応募しました」と最年少の小4で出演する吉田早貴さん。
最年長、70歳の三浦芳夫さんは「合唱歴は10年。70歳で新しいことに挑戦してみたかった。表町に住んでいた祖父母が前橋空襲に遭い、家は焼け野原、命からがら逃げのびたという話を聞いていたことも大きかった」と話す。
まえばし市民ミュージカル「灰になった街」は戦後70年の2015年に上演され、2023年に再演、2025年は再再演となる。
前回、主役の一人、特攻隊員の岡島三千男を演じた齋藤光剛さんは2度目の参加。「前回の舞台では歌を少しミスってしまい、悔いが残った。今回は挽回して100㌫の出来にしたい」と意気込む。
10月下旬にはキャストが決まる。メンバー74人中、男性は16人と少ないため、女性数人が男役を担わなければ回らない。同作は新さんが前橋女子高の教諭時代、同校音楽部のために作ったミュージカル。
「当時は全員女子で演じていた。ぜひ私こそは(男役を)という人がいたら希望を出してほしい」と呼びかけた。
【出演者募集 】市民ミュージカル「灰になった街」 誕生秘話を新陽一さんに聞く(N)
市街地の80㌫が焦土と化し、535人が亡くなった1945(昭和20)年の前橋空襲から来年8月、80年を迎える。区切りの年…