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【花火師・吉田さんが解説】
2024年前橋花火大会はザ・ニッポン 
鳳凰、百花繚乱から伝説へ

2024.07.13

【花火師・吉田さんが解説】
2024年前橋花火大会はザ・ニッポン 
鳳凰、百花繚乱から伝説へ

8月10日、第68回前橋花火大会が開かれ、1万5000発が夜空を彩る。前橋花火の特長は研ぎ澄まされた"色"。今年は赤やオレンジの「鳳凰」、白くきらめく「白銀の大瀑布」など色をさらに印象的に見せるプログラムになっている。著名な空間デザイナー、大髙啓二さんが前橋花火のために作った楽曲に乗せて打ち上げる七色変化の虹花火も見ものだ。企画、制作、打ち上げを担当する上州花火工房(前橋市東大室町)工場長で花火師、吉田敬一さんに2024年の大会を解説してもらった。
(取材/阿部奈穂子)

煙龍、和太鼓との共演

「ドン」という音で大会開催を知らせる音花火「号砲」。前橋花火大会では例年12時、15時、17時の3回、号砲を上げていたが、「今年は、17時の回は『煙龍』という煙の花火を打ち上げます」と吉田さん。紅、青、紫、黄、橙、緑の煙がのろしのように前橋の空に昇り、柳のように垂れ下がる。「いよいよ始まるぞ」という気分を盛り上げる。

高度な技術を要する煙龍を上げる花火大会は、秋田・大曲(おおまがり)の大会など日本でもごくわずか。

▲17時に空を見上げよう。轟音と共に煙の花火

今年のプログラムは「ザ・ニッポン」というイメージ。すべてのプログラムに、「和」のタイトルがついている。

「これまではワイドスターマイン、キャラクタースターマインという花火名がずらずら並んでいた。それでは想像力をかきたてられない。タイトルにちなんだ色と形の花火を上げ、ストーリー性のある大会にしていきたい」という吉田さんの想いがこもっている。

▲前橋市東大室町にある上州花火工房。ここで前橋花火は生まれる

前橋華龍太鼓と勢多農林高郷土芸能部「勢凛(せいりん)」の演奏で華々しく幕開け。総勢約30人が力強く太鼓を打ち鳴らす。

数分後、太鼓の音色にかぶせるように「鳳凰」と名付けられた花火が上がる。「伝説の火の鳥をイメージし、赤やオレンジ、黄色など燃えるような暖色の花火で、空を真っ赤に染め上げます」

▲2022年の大会から

大渡橋南北全長800㍍を使用した迫力満点の超スターマイン「百花繚乱」を経て、プログラム3は「前橋花火熱烈歓迎」。子どもたちの大好きなぐんまちゃんやころとんなど、お馴染みのキャラクターが夜空を飾る。

「今年はキャラクターの種類を増やしました。ドラえもんによく似たネコやカエル、風車、メガネなどなど。何が登場するかはお楽しみ」

慰霊の白銀

恒例の空中ナイアガラは、「白銀の大瀑布」という名前で登場。

「白銀色の花火は慰霊を意味します。前橋花火大会の始まりは1948(昭和23)年。500人以上の市民が犠牲になった前橋大空襲、そして終戦から3年後、復興への願いを込めて開催されたと聞いています。犠牲者への慰霊の念を込めて、これまで以上に白銀を際立たせ、研ぎ澄まされた光を放ちます」

▲花火玉の中に入っている「星」と呼ばれる火薬の粒。前橋花火の色の美しさは、独自な星の作り方によるもの

空間デザイナー、大髙さんが楽曲を提供

前橋ならではの花火といえば、プログラム6の「風神・雷神」と7の「虹の町」だろう。

「風神・雷神」は太鼓の演奏と共に、「ヒューヒュー」「ババーン、バリバリ」と音の鳴る花火を打ち上げる。「音で前橋名物、空っ風と雷を表現します」

「虹の町」は吉田さんが考案した世界にたった一つの七色に変化する花火。この花火を見て感動した、空間デザイナーの大髙啓二さんが「彩花火(いろはなび)」という楽曲を作り、贈ってくれた。

▲「新小売 リアル店舗戦略」の著者である空間デザイナーの大髙さんが楽曲を提供

大髙さんは、表参道ヒルズや東京駅KITTE丸の内、永井酒造新複合施設「SHINKA」の空間デザインを手掛ける、日本の第一人者。

「癒しやきらめきを感じる曲です。盛り上がりの部分もしっかりある。大髙さんの想いを受け止めながら、七色の花火を鮮やかに打ち上げたい」と力を込める。

▲前橋花火でしか見られない虹色に変化する花火。全国各地から花火ファンが見に来る

クライマックスのプログラム8は「伝説」。全長800㍍で打ち上げる超ワイドスターマインだ。今年はフジテレビ系ドラマ『ブルーモーメント』の主題歌、ボン・ジョヴィ「レジェンダリー」 に乗せて、光の演出を繰り広げる。

ポジティブなメッセージとサウンドで、すべての世代を勇気づける応援歌といわれている「レジェンダリー」。

「何度も曲を聞きながら、いま最高の演出を考えています。来年につながるクライマックスにしたい」

吉田さんが前橋花火に関わり始めてから10年を迎える。「前橋花火を唯一無二の大会に――」との想いで走り続け、常に変化をさせてきた。今年もその心意気を存分に楽しめそうだ。

▲2022年の大会から

第68回前橋花火大会
日時/2024年8月10日(土)荒天時中止
会場/利根川河畔(大渡橋南北河川緑地)
時間/19時~20時10分(予定)
「まえばしCITYエフエム」(84.5MHz)は18時30分~21時、特別番組「生放送 前橋花火大会」を放送
花火の解説や音をリアルに楽しめる。会場周辺ではスマホラジオより、ポータブルラジオの方がつながりやすさは確実。

第68回前橋花火大会プログラム
19時 オープニングセレモニー
19時07分 前橋華龍太鼓、勢多農林高郷土芸能部「勢凛」の演奏
19時10分 1.「鳳凰」
 伝説の鳥、鳳凰をイメージした赤く鮮やかな花火
19時16分 2.「百花繚乱」
 全長800㍍の超ワイドスターマイン
19時22分 3.「前橋花火熱烈歓迎」
 ぐんまちゃん、ころとんなどキャラクター花火
19時32分 4.「白銀の大瀑布」
 白銀に輝く空中ナイアガラ
19時38分 5.「みんなの推し」
 音楽花火。前橋花火大会公式Xでリクエストを募り2曲をセレクト
19時48分 6.「風神・雷神」
 太鼓の演奏と笛の音の鳴る打ち上げ花火
19時55分 7.「虹の町」
 七色に変化する虹色の花火
20時01分 8.「伝説」
 グランドフィナーレの超ワイドスターマイン